
いい女がいろんなイケメンとあちこちでひたすら戦う、そんな映画です。
主役、ジーナ・カラーノのアクションがそこそこ楽しめたらそれでいいのかな、という映画なんでしょうかね。ジェイソン・ボーンの女性版、というほどにはスーパーではなく、各ファイトシーンはかなり互角に近くて自分も打撃・ダメージを受けながら接近戦を制する、というスタイルなので、その辺がどう映りますか。
冒頭でのカフェの乱闘シーンで、巻き添えを食った青年の車をカージャックして逃避行、その間に青年スコットに彼女が巻き込まれた、バルセロナで始まる事件の詳細を語って聞かせる、というスタイル。初めはもう少し複雑な事情があるのかな、と思うじゃないですか。だってこの青年が何者かわからないし、スパイや殺し屋の世界が企業秘密をこんなにべらべら打ち明けて、最終的に誰に伝えてほしいんでしょう。
でも、そのベタなパターンなんですよ。結局、保安官につかまっちゃうし、青年は途中で救われてフェードアウトするし、細かいディテールや名前まで覚えた彼の努力はどうなっちゃうんでしょう。
でもいいんです。ものすごくアクション向きに絞られたか、というと一見そうも見えないマロリーが、全力で走って逃げる悪漢を叩きのめしたり、ただ銃で撃ち殺せばいいのに、あえて接近戦できわどいところまで追いつめられてからチョーク技で相手を仕留めたり、そのアナログなプロレス感が、最近映画のアクションから失われすぎじゃないでしょうか。
キャスト、マイケル・ファスベンダーは「エイリアン・コヴェナント」のアンドロイド、裏切り者ケネスはユアン・マグレガーがかなりチャラく演じていて、「キングスマン ゴールデン・サークル」のテキーラを演じたチャニング・テイタムが、冒頭の乱闘シーンの割に、意外に純情にマロリーのことを好きだったのがわかったり、意外に若く見えるマイケル・ダグラスはどっちに転んでも損はしないチョイ悪親父、そして61歳の若さで亡くなったビル・パクストンが、いつも冷静沈着に娘の面倒をみてそらっとぼける父親役。
スティーヴン・ソダーバーグって、こういう作風だったかな、とちょっと考えたんですが、過去作品で見たものもずいぶんバラエティーに富んでいて、器用な人なんだな、とむしろ感心してしまいました。