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遺伝子操作に支配された世界というのは、それなりに魅力的な設定で、それによって差別される人が出る、というのはまた今日的にホットなテーマで、取り組み方によっては面白くなったと思うのですが、それでもこの主人公を応援したいとは思わなかったのは、やはり動機はともかく、無茶な偽装工作の結果がどこに結びつくかに思い至らない浅はかさ、ということでしょうか。

結局はヴィンセントはもはや心臓時限爆弾がいつ破裂するかわからない。自分の死に場所を選ぶためだけにいくならそれは勝手ですが、他のクルー全員の命を危険にさらし、ミッションを台無しにする可能性はどうでもいいんでしょうかね。だとすると、地上に残って自殺するジェロームとどこが違うのか、ということになります。

殺人事件の捜査がどこに行き着くか、だいたい見当がついてしまっていたので、途中でなにを目的に見続けたらいいのか、犯罪がばれるかどうかにドキドキできるか、それにしてはヴィンセントは愚行を繰り返し過ぎで、もう苦しい、しかなくなってしまったように思います。

だいたい、なんで車椅子で生活してるのにジェロームの家は螺旋階段なんですか。バリアフリーじゃなさすぎで本当に未来?と思ってしまいました。

刑事が途中からずいぶん目立つな、と思ったらあれアントンなんですか?全然気づかなかった、というかどうでもいい話になってませんかね。最後に兄弟でもう一度水泳対決するのも意味わかりませんでした。あれで兄が勝ったから、犯罪は見逃してくれた、ということですか?変なの。両親は亡くなるにはずいぶん早いように思いましたが、なにか不幸な出来事でもあったんでしょうか。ヴィンセントの家出の理由も実はあんまり納得いかなかったです。

ユマ・サーマン演じるアイリーンはさすがにきれいですね。映像がきれいなので時代感もなく、こんなに昔の映画だったのか、と思いましたが、彼女からしたら、ウソをつかれて激怒するはずのところ、なんで彼を許せてしまったのか、いま一つよく分からなかったです。あんまり心情的には丁寧な扱いを受けてないですね。一方ヴィンセントは大事なミッションを前にこんなにデートを繰り返したり、外泊したりして、大義を見失いすぎじゃないでしょうか。DNAの証拠、残し過ぎでしょう。

アラン・アーキンの刑事の操作方法も物言いはコロンボ的なところもありますが、科学に頼った捜査との整合性があんまりなくて、そんなに鋭い勘が冴えているわけでもなく、ただ行き当たりばったりにあちこちで検査をしたら、犯人がたまたまいた、みたいな話ですね。

あと遺伝子検査をごまかす手口が毎度同じことの繰り返しでちょっと飽きた、ということもあり、うれしい誤算は最後にドクターが見逃してくれたことでしょうか。アレを持つのには利き手を使うものだ、とか。じゃずっと気づいてたわけですね。

そんなわけで、ストーリーそのものは全然ダメなんですが、主演のイーサン・ホークがグレン・グールドの若いころにとても似ていたのは好感持てました。あと、検査医役のザンダー・バークレーは「24」でもジャックの上司メイソン役をやって、プライベートでは同じ「24」のニナ・マイヤーズ役のサラ・クラークと結婚した人ですね。