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2017年の映画。ニコラス・ケイジも昔は犯人役のチンピラみたいに薄っぺらいキャラクターが多かったのですが、今回は定年を控えたベテラン警官。原作がしっかりした本で、原作者が女性だったらしく、それをどのように映画にするか、というところに気を使った様子が伝わってきます。

実はニコラス・ケイジのヒロイズムをテーマにしたものではなく、この世の中が弱者をいかに置き去りにしてゆくか、そして被害者がどのような脅威にさらされるか、をかなりリアルに描いているのが特徴的。後半の成敗シーンは、どちらかというと昔の西部劇のよう。まったく違う二つの面を持った作品だったと言えます。ニコラス・ケイジがインタビューで「侍のような男」と主人公ジョンを評しますが、映画の冒頭で流れる尺八の音色はその象徴なんでしょうね。

見事につづられたスリラーやドキュメントを想像するとどちらも裏切られるのですが、娘ベシーとの隠れた交流を軸に、被害者ティーナと自分の境遇を重ね合わせるジョンの露出をできるだけ抑えて表現したのは全体として美しく見えます。

王道のスリラーなら、ここで真相がばれるまでを描くんでしょうが、そうすると完全にジョン主役のサスペンスになってしまう。むしろ女3人の家族を描くためにこのような形の物語になったのだと思います。

犯人のチンピラとその親がいかにもの雑魚感で、家をローンに入れてまで弁護士を雇うとか、悲しすぎますがしかもそのダメ息子を殺された父親は本当に立場ないですね。

メラニー・グリフィスなどと浮名を流したドン・ジョンソンが悪徳弁護士カークパトリック役。テレビ中心に活躍した人ですがやはりしたたかさや秘めた怖さを表現するのはうまいですね。

最初はニコラス・ケイジが監督をすることになっていたがスケジュールの問題で降板。エンドクレジットを見るとちょい役でコッポラ姓の名前もあるので、コッポラ・ファミリー印の作品なのかもですね。