
イケメンと美女による、信じられないようなサスペンスドラマ。
フランスのレジスタンスの生き残りとカナダの諜報員という異色の組み合わせがモロッコでの暗殺任務を終えてイギリスに移住、その後平和に暮らせるかというのがメインのお話です。
あらすじでばらしてはいけないと思うのは、これはあくまでもマックス(ピット)の側に入った情報に基づいて、マリアンヌ(コティヤール)がスパイかもしれない、でも無実かもしれない、無実と信じたい、と思うから成立するサスペンスなので、そこのところは伏せてほしいですよね。
でもパブでのシーンになるまでは、真相はわからないので、最後の逃避行までがテンポよくつながって、あんまり退屈にだれた感じはなかったです。
脚本には確かに穴がたくさんあって、まず、なんでドイツの大使の暗殺にカナダの諜報員とフランスのレジスタンスくずれが組むのか。誰に任命されたのか。そもそもマリアンヌの任命責任は誰にあったのか。身元をしっかり照会できなかった組織にこそ責任があったでしょう。しかも、あれだけ命を懸けて行ったミッションの代償として、マックスがマリアンヌを連れていく、あるいは結婚する、あるいはイギリスに行くかどうか、というのはすべて保証のない話。ドイツがそんな面倒なことをしてスパイを送り込むメリットなんかないわけで。
マックスの行動様式も相当おかしくて、疑惑を聞いたとたんにバレバレの動揺した態度。あれでマリアンヌが疑われて気づかないわけがないし、フランスまで飛んで元レジスタンスに直接確認するだの、その過程でドイツ兵を戦車ごと殲滅するなど、いくらなんでもありえない。そっちの方がよほど大きな規律違反では。
仮にマリアンヌの主張が真実でこどもが生まれてからドイツのスパイに狙われたなら、マックスに相談すれば一発で解決する話です。マックスだってそう思うべきだし、最後にスパイを始末するくらいなら、もっと早く動けよということになりませんかね。本気で逃げようと思ったら、軍の空港以外にいく場所があるのでは。スパイなんだからもっとうまく潜伏するとか、こどもがいたら無理ですかね。
大使暗殺のときについでに殺した友人の奥さんがずいぶん恨みがましく見ていたので、てっきりなにかの伏線になるかと思ったら、そこは関係なかったですね。
スリラーとして本当に面白くするなら、情報がもれる理由にもう一捻りほしくて、実はマリアンヌは無実、の方が盛り上がったはずだとは思います。
ブラッド・ピットは、男前ですが、やはり歳相応に老けて、ちょっとオッサン感が出る部分もあるのと、前半の凄腕ぶりに比べると、イギリスに行ってからはずいぶん勘が鈍った感じで、事態の推移に全く頭がついていってない感じ、ちょっと残念です。
マリアンヌ役のマリオン・コティヤール、最近見た中では「ビッグ・フィッシュ」「パプリック・エネミーズ」「インセプション」「アサシン・クリード」あたりですか。謎を引っ張るために後半が表情のない演技になってしまったのはもったいなかったですが、それでもいい演技を見せてました。
ロバート・ゼメキス、最近はこういう仕事をしてるんだ、とか、アラン・シルヴェストリすげえなぁ、というのもあります。撃墜された戦闘機が屋根をかすめて近所の芝生に墜落するあたり、さすがの演出でした。戦時中とはいえ、戦地を離れてのお話だったので、あとは結構地味になるところ、うまく見せたと思います。
最後に原題の「ALLIED」。連合軍のことをAllied Forcesというので、これはモロッコでの作戦の開始から、マックスとマリアンヌは「同志」として戦い、その運命尽きるまで行動をともにした。結婚生活も含めて「ALLIED」だったのだ、という象徴のようなタイトル。邦題でマリアンヌだけを全面に出してしまうのはちょっとミスリード&ネタバレな感じがしますね。