くたびれたオッサン刑事と過去にいわくあり気な女の組み合わせ、というのを聞くと真っ先に思い浮かぶのが「シー・オブ・ラブ」。枯れすぎてないパチーノとエレン・バーキンのエロさが意外なほどはまって、最後のどんでん返しまで息をつかせず見せた佳作です。
そしてこちら「ハイヒールを履いた女」。

アンナに殺人シーンのフラッシュバックが現れ始めた時から謎は半分解けたようなもので、さらに途中の散歩シーンなどの画格の切り取り方から、どこが妄想部分なのか、が見てとれてしまったので、謎解きの大部分は済んでしまい、あとは動機ぐらい。ラストに彼女を救ったこと以外、彼女が正当防衛だった、という事実しかわかりませんでした。
登場人物の行動の愚かさも、イライラした原因でしょうか。バーニー刑事、最後に電話に出たことで締め出されるとか、間抜けすぎでしょう。被害者の妻・息子もひたすら頭が悪い。自分にとって最適の行動をとって謎が深まるのは歓迎ですが、ろくに考えずに逃げただけ、しかもただ見つかって捕まる、という展開はストーリー上の時間稼ぎ以外の意味を持ちません。
最後のシーンで彼女の本名アナ・マチスンが明らかになって、すでに亡くなっていた?彼女の娘と孫の消息も明らかになる、ということなのか、彼女が殺したのか、それとも?少しはっきりしなかったように思います。
盛りを過ぎた女の悲しさ、という意味ではシャーロット・ランプリング、このオファーをよく受けたな、と勇気をたたえたい気持ちです。ヘレン・ハント的なキュートさと、キャシー・ベイツ的なブサイクさを併せ持つ難しいお年頃の女性、という意味ではこれ以上のブッキングは難しかったでしょう。
トータルで見ると、ラストにもう一つどんでん返しがあれば、と残念に思わざるを得ません。