ヴィックスドロップ味のハミガキ粉で歯を磨きながら考えた。

せき止めドロップの味がするからといって、このハミガキ粉で歯を磨いても咳が止まるわけではない。

だとすれば、せき止めドロップの本質はその味ではなく、そのせき止め効果にある。ヴィックスドロップスの味は、そのせき止めの薬そのものの味をごまかすために、後からつけられた人為的なものである。

ハミガキ粉においても然り。

歯を磨く上で、ヴィックスドロップスの味は、虫歯を予防するのにはなんら役立っていない。このハミガキ粉はたまたまヴィックスドロップスの味がするが、それはたまたまであって、普通のハッカ味のハミガキ粉でも、なんら効果は変わらないはずだ。

いや、そもそもなんでハミガキ粉はハッカ味なのか。別に世の中のすべての人がハッカが好きなわけじゃなかろうに。実際、子供のうちはあの辛さがいやで、歯を磨きたがらない子どもがいるから、わざわざ子ども向けにバナナ味やイチゴ味のハミガキ粉なんかがあったりする。

そうかわかった。

あのハッカのさわやかさは、「歯をみがいたぞ」と自慢したくなる、「歯を磨いたぞ」感を演出するための、偽装にすぎないのだ。

だとすると、待てよ…。われわれは、ハッカの味にだまされて、大して磨いてもいないのに、「歯磨きをした気」になってしまっているのではないか?いやむしろ、それこそが、ハミガキ粉業界と歯科医業界が結んだ秘密の「持ちつ持たれつ」協定に違いない!

歯科医は虫歯予防のために歯磨きを勧める。そして、ハミガキ粉業界は、虫歯がまったく完治はしない程度に予防する効果を持ったハミガキ粉を開発し続けるのだ。完璧だ!

このワナにハマらないための画期的なハミガキ粉を考えた。

「焼き肉味ハミガキ粉」だ。これを使って磨いても、ちっともさわやかな気分にはならないので、われわれはますますシャカリキになって歯を磨き、いつしか歯は完全にゴミのとれた状態になる。世の中からは虫歯がなくなる!

よし、早くこの大発明を世間に広めねば…(シュト!)…【クビの後ろに吹き矢の刺さる音】