
主演のエリック・バナ以外、ほとんど名前は知りません。ときどき、見たような顔がよぎったような気がしてたんですが、あとでクレジットを探しても見つかりませんでした。ロバート・バークによく似た顔を見かけたんだけどなぁ。でも基本的にはユダヤ人ぽい顔立ちをちゃんとそろえようというのが狙いなんでしょうね。
スピルバーグ監督の政治的な意図についてあれこれ話題になっているようですが、正直に言って、それは映画の本質を外れた議論だと思いました。映画の最後に主人公が告白しているように、この報復合戦自体が間違っていた。一度始めたり永遠に終わりはないのだ、というメッセージに読み違いはありません。そこにいたる心情をシンパシーをもって描くために、どちらかの側に心理描写を絞るのは、手法として当たり前のことです。
こういう作品の場合、ドキュメンタリー的な側面もあるので、あくまでも描き方はリアルなのですが、さすが根っこがホラー監督。心理的なサスペンスの仕掛け方が上手です。ちょっとした車の配置や子供の気まぐれで完璧に練られたはずの作戦がほころんでゆく。知らないうちに神経がマヒして、次第にあり得ないようなミスを繰り返して自滅してゆく。そんなテロリストの描き方がリアルです。さらに、殺人や射殺シーンの描き方も、他のSF作品とはまったく違うリアリズムを追求しています。女性の殺し屋を始末するところなど、胸に開いた小さな穴から、次第に血液があふれてくるところなど、特撮なのか、細工物なのか、とにかく良くできています。
編集では、ミュンヘン事件の再現映像が主人公の中でフラッシュバックしていくシーンが効いています。途中で鍵を握っているフランスの情報屋ルイは実在したんでしょうかね。ちょっとネットで検索してみたら、実はイスラエルの選手たちはテロリストに殺されたのではなくて、ドイツの警官隊に誤射?で射殺されたのだとか。そうなるとだいぶ事実関係の描き方も変わってくるような気がしましたが。