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ある待ち合わせに相手が遅れることが分かっていたので、新宿駅南口の本屋でぶらぶらしていたら店頭に平積みにおいてあったので、なんとなく手に取った本です。帯には「P.コーンウェルも裸足で逃げ出す」みたいな露骨な比較広告的な文言が踊っていて、ずいぶん威勢がいいなぁ、と思ったら、それがどこかの本屋さんの店員のコメントだったりして、強気なんだか弱気なんだか。でも、こんなコメント店名入りで載せたら、講談社から意地悪されたりしないんですかね。いまは小売店の方が立場が強いのかな。

で、この「報復」。物語としては1988年にレイプ事件の被害者だった主人公が、検察官としてキャリアを築き、12年後の2000年に出会った連続殺人事件の被疑者が、このレイプの犯人だったと知るところから起きる葛藤をメインに描いています。過去の事件に関しては担当の州も違えば時効も成立していて、もはや過去の犯罪で裁くことはできない。では現在の殺人については…?

有罪である、という心証はあっても決定的な物証はない中で、大きな善のために小さな悪に手を染めざるを得ない主人公、裁く側が犯罪を犯している、という皮肉なシチュエーションには興味がありました。また、裁判の手続きをきちんと描いているので、捜査の手続きに不備があるといくら決定的な物証でも証拠として採用できなくなることがある、などの豆知識も利いています。

ただ、いくつかの賞で被疑者目線、あるいは犯人目線の段落があり、ちょっとネタバレっぽいので、途中からは謎解きよりもサイコ・ミステリーの方に重心が移っているかも。あとやはり主人公の心情を描くのに非常に多くのページを割いていて、丁寧ではあるのですが、もうすこしぐいぐいとストーリーで展開してくれた方が読みやすかったかな、と思います。

作者のジリアン・ホフマンは、結婚して退職した元検察官なので、実際の手続きについても詳しいものと思います。そのあたりはコーンウェルとかと共通点がありますね。多分こういう、元業界(法律・医学・検察)の作家、というものの流れを作った人物の一人がジョン・グリシャム(「ザ・ファーム」「ペリカン文書」ほか)ではないかと思いますが、現実を知りすぎていると想像力が足りず、想像力だけで物を書くと飛躍しすぎる、このバランスは難しいですな。しかもアメリカでヒットする小説というのは、多民族を相手に分かりやすく書く必要があるので、たいてい冗長で説明過多なものが多くなります。最後の落とし方なんぞは、ちょっとご都合主義すぎないかな、と思う部分もあるんですが、まあ面白かったんでは。

あと、カバーがちょっと派手なので、電車の中ではエロ小説と間違えられそうです。ちょっと変えてもらえませんかね。