

サム・ライミという人はいかにもゲテモノ好き、というイメージがあるんですが、題材や原作のフィールドが偏っているからそんな気がするだけで、映画の作り手としての手腕やテクノロジーの使いこなしでは相当なレヴェルの人なんじゃないか、とつねづね思っています。このスパイダーマンも、そんな映像のトリックが満載の作品です。
始まってすぐに「あれ?」と思ったのは、音楽。ワーナー・ブラザーズのドル箱企画である「バットマン」とテイストがかなり近いのです。アメコミ出身のリメイク企画、というだけでも相当かぶっているのにまさか、とか思いましたが、音楽のクレジットはやはりあの「ダニー・エルフマン」。恥も外聞もかなぐりすてて、実を取りに行った、という事なんでしょうか。ていうか受ける方も受ける方ですね。ちゃんとキャラクターを描きわける自信がある、ということでしょうか。
トビー・マグワイヤ演じるピーターが、社会科見学(この場合理科見学か?)の途中で品種改良中のクモに噛まれたのがきっかけで、体質に変化が起きる、というのがものすごいすっ飛ばしの中で描かれていきます。この場合、突っ込みたくなるのは、科学博物館がそんなに簡単にクモの品種改良とかやってていいのかい、というのと、その大事なクモを逃がしといて全然慌てる様子がない、という管理体制の甘さですか。ピーターの後にも噛まれる人が続出したら、スパイダーマンだらけになってしまいますがな。
ピーターの幼なじみだけど、ずっと声をかけられないでいるあこがれのマドンナが、メリー・ジェーン(MJ)。演じるのはキルステン・ダンストという女優さんで、「ジュマンジ」では子役だったのかな?実はこの人がどう見ても美人に見えなくて、しかも高校生を演じるには老け顔かも。ピーターがなんでこんなコにほれてるんだろう、というのがずっと謎のままです。好きな人が見れば美人なんでしょうか。彼女に罪はないですが。
ピーターの親友のハリーと、その父親のノーマン(ウィレム・デフォー)がまた鍵を握る、ということで、非常にコンパクトな人間関係の中にトラブルと解決の火種が同居しているわけですな。ノーマンが何かの実験の結果で恐ろしい体力を身に付けた、ということは分かったのですが、それ以外の細かい事は結局あまり描かれませんでした。ただ、鏡の前のノーマンの一人二役はなかなかすごみがあってよかったです。
で、いつの間にか能力を使いこなしたピーターはレスラーに挑戦して小銭を稼ごうとするのですが失敗して、しかもその帰り道に育ての親のおじさんが強盗に殺されてしまいます。ものすごく密度の濃い話です。実はこのおじさんとの人間関係の部分はすごく泣けます。なんでだろう。
その後舞台はニューヨークに移りますが、MJは女優を目指すはずが安いカフェのウェイトレスでその日暮らし、一方ハリーと同居のピーターは豪勢なテラスハウス住まい。資本主義ってこういうことなんですね。
その後は、スパイダーマンはちまちまと街の小さな犯罪者をこづき回してその日暮らし。その影響で仕事に遅刻してクビになったり、ちょっと間抜けな人生を。こういう犯罪を察知するための情報はどうやって手に入れたんでしょうね。一方、ノーマンは何度も会社を乗っ取られたり競争に負けそうになりながらもその都度相手を滅ぼして、生き残ります。こうまで強引な手をとったら、警策の捜査も入りそうなものですが。
で、グリーン・ゴブリンとなったノーマンはスパイダーマンを仲間に引き入れようと何度も誘いをかけますが、うまくいかない。業を煮やして最終決戦へ、という流れです。
そういう意味では、肝心の戦いがあまり盛り上がってない、というのはお分かりですね。スパイダーマンは、基本的に恋愛を戦いも受け身の人なんで、悪を探してたたきのめそうとか、そんな大それた事は考えてないんです。どっちかというと、降りかかる火の粉は振り払うタイプというか。だから最終決戦も「え、こんなことで?」というようなきっかけで片づいてしまい、しかも暗い森の中で密やかに決着がついて終わりなんです。
最後に、MJから告白されるも、なんかわけ分からない理由で彼女の告白を「友達でいよう」で片づけ、彼女はピーターの正体にうすうす感づいたっぽいところで終わり。ちょっと煮え切らないままですね。でもとにかくテンポがいいので、損した感じは不思議にしないんです。