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ニコラス・ケイジのどこがいいのか、実はよく分からないまま今日まで生きてきました。「ワイルド・アット・ハート」も「アモス&アンドリュー」も、「ザ・ロック」も、「フェイス/オフ」も、「スネーク・アイズ」も見たのですが、まだ分かりませんでした。本当にいろんな役をこなしていて、ヒーローにもなり、粋がったちんぴらもやり、プロフェッショナルな泥棒もやりながら、どの役も本当は彼にはぴったりではないような気がしていたのです。彼にはむき出しの狂気は似合わない。むしろ迷った子供のような、自分はここに属さないということを自覚した子供のような悲しみの方が、彼の瞳には似合うようです。そう、彼の目ってキレイすぎるんじゃないでしょうか。

その瞳をサングラスに隠しての武器商人ユーリの役柄。ロシアの移民の子がロシアン・マフィアの殺戮現場を目撃した瞬間から武器に魅せられて、次々と裏の世界に手を染めていき、のし上がる様子が描かれます。実際には、この前段部分の描き方の物足りなさが不満だったりしたのですが、後半の展開のうまさにそういう不満は吹っ飛んでしまいます。

その根は彼の弟・ヴィターリの弱さの中に芽生えていたのでしょうか。もともとは料理人として身を立てるつもりでいたところに兄に無理やり裏業界に引き込まれた形の弟。自分に戦争の責任はないといいながらも実際にはその拡大に加担しているという意識を紛らわせるために麻薬におほれていく姿。そして立ち直ってからは堅気に生きる決心をしたその矢先に、ふたたびユーリの力にならざるを得ない皮肉。

ユーリの妻エヴァもその彼の生き方を見て見ぬふりをしながら自分をだまし続ける事に耐えられなくなり、彼の元を去ります。どうして足を洗えないのか、と問いただす妻に対して答える言葉は、ただ「その才能があるから」。自分が生きた事の証が人の死の原因になるという痛烈な皮肉でしょう。

そして、身内といえる人間すべてを失って、逮捕された後に、本当のクライマックスは来ます。彼を追い続けてきた捜査官の尋問に不敵に答えるユーリ、その訳は…。

オフィシャルサイトを見ても分かりますが、この映画自体が武器商人を肯定しているわけではもちろんありません。実際映画の制作のためのスタジオも、メジャーなところには軒並み断られたのだとか。このアンチ・ヒーローをあえて演じた彼の心意気もすがすがしい。僕にとっては、ニコラス・ケイジの代表作と言えるものになりました。

同じ実話ベースとはいえ、「ドミノ」が目指した地点をはるかに超えて多くのものを語る傑作だと思います。