

最初の数分でちょっと後悔しました。先日「ノロイ」を見てさんざん後悔したのですが、プロデューサーが同じ一瀬隆重なのです。また間延びしたものを見せられるのかなぁと一瞬覚悟しましたが、さすが諸星大二郎原作つき、そこは心配する必要がありませんでした。阿部寛が先日の「姑獲鳥の夏」に引き続きおいしい役どころで出ています。主人公の藤澤恵麻は、いままで見たことがなかったのですが、なかなかモノローグの読みがうまく、トータルでは当たりでした。若い頃の伊藤麻衣子にちょっと似てるかも。常に美人に見えるわけではありませんが、ひたむきなキュートさがあって、よかったと思いました。
舞台設定はかつての隠れキリシタンの里を舞台にしていて、そこにある「ハナレ」という被差別集落のようなものが謎の中心として位置づけられています。諸星作品だと、普通に現れてくる異質な世界へのとびらなのですが、実写にしてしまうと、かなりベタに差別される、知的障害のある人々の集団のようになってしまって、変に生々しくなってしまった感は否めません。
かつて神隠しにあい、その記憶を失ってしまった藤澤演じる佐伯里美が、その謎を解き明かしながら、10年前の過去に忘れてきた「言葉」を発するまで、が無理なく縦軸として描かれていたと思います。
ただ、謎として引っ張るべき隠れキリシタンの変質した宗教の展開については、あまり伏線として見るべきものはなかったかもしれません。
クライマックスは、ちょっと映像としてはややちゃちに終わってしまったかもしれませんが、諸星ワールドにはなっていたかな、と思います。現代人が失ってしまったものへの問い掛けで終わるのはまあ、ちょっと月並みかも。