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職場の同僚に勧められて読んだ本です。著者は武居俊樹。名前にはあまりピンと来ないのですが、最近定年退職するまでずっと小学館でマンガの編集にかかわってきた、「伝説の赤塚番」の方なんだそうです。子供のころ、あまり週刊マンガ雑誌を買わせてもらえなかった僕には、あまり時代意識がないのですが、懐かしい、と思う人も多いのでしょう。

「おそ松君」のサンデーからマガジンの「天才バカボン」誕生、そして「バカボン」のサンデー引き抜きから「モーレツあ太郎」誕生、そしてニャロメの誕生…。ここには、一緒に時代を作った者でしかわからない、等身大のマンガ家の実像があります。同時に、「編集がマンガ家を作る」という意識の初期の形を見て取ることもできるかと思います。「マンガ家を生かすも殺すも編集者次第」というのはきっと今も言えることなんでしょうが、そのためにどこまでとことんつきあい、一緒にばかになれるか、そのハラのくくり方は、もはや若い世代には求められないのかもしれません。

同時に、赤塚不二夫という希有な作家の、根本を形作ったものが見えてくるような気がしました。本人が語る「偽自伝」の章では、10歳で迎えた満州における終戦とその直後の生死となりあわせの混乱、戦後の極貧生活と飢餓などが率直に語られ、その中でのマンガとの出会いがいかに赤塚にとって大切なものだったかがわかります。「天才バカボン」をピークにした赤塚マンガの不条理と、キャラクターのもつ迫力は、どこかこの戦後の「飢え」とつながっているような気がします。

そして、ピークを過ぎてから、世代交代を図りたい出版社の思惑と、まだ一花咲かせたいと思う焦りの気持ちなども率直に語られ、その晩年の不遇ぶりには胸が痛みます。

もう70歳になってしまった不世出のギャグ作家・赤塚不二夫、いまは病院のベッドで意識不明だとのこと。同世代のマンガ家が次々に鬼籍に入るなか、不死鳥のようにカムバックしてくれないかと思わずにはいられません。