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子供のころ、一時期だけイギリスにいました。かれこれ30年前の話です。BBCの音楽番組Top of the Popsでは毎週のようにクイーンのボヘミアン・ラプソディがかかり、アバのママ・ミアがリリースされたころ、と言ったらどれくらい昔かお分かりでしょう。

当時子供ながらにお気に入りのコメディがあって、それは白黒サイレント時代に全盛を誇ったローレル&ハーディーという二人組みのコメディアンでした。日本ではチャップリンとキートンぐらいしか有名ではないですが、イギリスでは親しみやすさではキートンをしのぐほどの人気キャラクターです。日本では「極楽二人組」として紹介されたこともあるようですが、それほどの大衆性を得たわけではなかったようです。

さて、何が謎だったかと言うと、当時から僕は音楽が好きで、テレビの音声をカセットテープに録るのが大好きだったのですが、ポップスの番組であるところの Top of the Popsに、なぜかこのローレル&ハーディーの曲がリバイバルヒットしたことがあったのです。この曲は今調べてみると1937年の映画Way Out Westの中に収録されているTrail of the lonesome pineという曲なのですが、当時はそんな細かいことを知る由もなく、ただなんとなくいい曲かも、とおもって曲の途中からカセットテープを回していたのです。

しかし、翌週になってもその翌週になっても、その曲がもう一度かかる気配はない。いつしか手元には何度も繰り返して聞くことになるその曲の不完全な録音だけが残りました。今でもビデオクリップ(映画の一部)の演出を鮮明に思い出すことができるその曲は、僕にとって、いつしか楽しかったイギリス滞在の思い出を象徴する、貴重なものとなっていました。

それが先日、何かの弾みにアメリカのアマゾンのサイトをのぞいているときに、タイトルを見て、「あ、あの曲だ!」とひらめいたのでした。即効でワンクリック購入しました。昨日それが届いたのです。

はじめにアメリカ人のフォーク野郎が気取って歌っているところにローレルとハーディーが割り込んでメロディーを取り、はじめは二人ではもっていい感じで歌っていると次第にやせっぽちのローレルが1オクターブ下の低音で朗々と歌い始める。おいしいところを持っていかれたと感じたハーディーは、ハンマーで相棒の頭をぶん殴るのですが、するとこんどは美しいソプラノで歌いだす、というてらいのないわかりやすいコント仕立てになっています。

そして、僕は30年ぶりにこの曲の全く失われていた冒頭部分を聞くことができたのでした。
他にものどかな名曲とちょっとユルめの彼らの歌声がなんとも心地よいアルバムです。