中学校が一緒だった同級生の女性から急にメールが来たのでおどろいていたら、内容は「○○くんが亡くなったの、知ってた?」でした。まさに晴天のへきれきです。○○くんは、それこそぼくの実家から歩いて3分の所に住んでいる、小学校からの同級生。あわてて、他の知り合いに電話をしました。

「○○が死んだって話、聞いたことある?」
「…おまえも知らなかったの?おれも聞いたのは10日前だった。」

どうも亡くなったのは9月の始め頃のようです。死因は心不全だとか。本人の生前の意志と、家族が動揺していたことが理由で近親者だけの密葬を行い、あまり回りには知らせなかったのだそうです。それにしても、2日前には、友だちと飲んでいたというくらい、元気だった働き盛りだけにショックが大きいです。

家が近かっただけに小学校の時はほとんど毎日のように一緒に学校に通った仲。一時期ぼくが転校したので、しばらくブランクがありましたが、中学校でもずいぶん一緒に草野球やらしたものです。○○くんはガキ大将タイプだったので、どちらかというとぼくは子分の役回り。おもちゃも向こうの方がたくさん持っていたので、向こうの家に遊びに行ってばかりでしたな。頭も決して悪くはないのですが、けんかっ早いのが玉に瑕。

…こんなことがありました。
小2だった頃のある日、二人で駄菓子屋に立ち寄っていた時のこと。彼が何を思ったか、粉末ジュースを二袋買いました。彼の家まで帰る途中で、彼は自分で一袋に水を入れて飲み、残った一袋をぼくに預けて、ふと家に入っていってしまったのです。ぼくは当時ぼんやりしていたので、何となく彼がそれをぼくにくれたような気になり、彼がいない間にその袋に水を入れて飲んでしまいました。

飲み終わって、空き袋を捨てたころに、家の中に入っていた○○くんが帰ってきました。で、こういうのです。「あれ、預けておいたやつは?」

その瞬間にぼくは悟りました。あれは、ぼくにくれたわけでは全然なくて、ぼくは金庫番のようなモノだったのだと。彼はトイレにでも行っていただけなのでしょう。確かに「あげる」と言わない限り人にモノはあげたりしないのが、こどもの世界の不文律です。その場の雰囲気をぼくは勘違いしていたのです。その瞬間に「飲んじゃった」と答えていれば良かったのかもしれません。しかしその瞬間、ぼくには余計な知恵が働きました。未だになんでそんな事を言ったのかわかりません。「あれ、どっかに置いたかな?ちょっと探してみる。」

ないことが分かり切っている彼の家の車庫を探し回ります。次第に彼も一緒に探そうという空気になります。あちこち探しながら、自分が彼の視界の外に出たことを確認した瞬間、ぼくは一目散に家に走って帰りました。すべてに、目を閉じ、耳をふさぎ。この記憶すら自分で封印していたかも知れません。

彼がこの事を後でどう思っていたか、ついに知る機会を失いました。