
予告編みたいなものはどこかで見た記憶があって、事故に遭ってもけがしなかった人が自分の運命に気づいてゆく話だ、ということだけは分かっていました。逆に言うと、主人公のブルース・ウィリスのことは大体見当がついていたのですが、もう一人の主役、サミュエル・L・ジャクソンについてはまったく予備知識なしに見たことになります。
映画冒頭にいきなりアメリカのコミックスコレクター人口の話だとか、とにかくアメコミについての予備知識が出るので「?」になったのですが、最後まで行って初めて、「ああそういうことだったのか」ということになりました。これは、アメコミのヒーローが自分の力を自覚して、ヒーローとしての役割を果たすようになるまでを、妙にしんねりむっつり描いていく、ヒューマン・ドラマらしいのです。いわゆる特撮ヒーロー物と、ドキュメント映画の中間にある、すき間産業的作品なのですね。描き方は、「シックス・センス」とほぼ同じスタンスの、ミステリー物として描かれていくので、ちょっとこちらが先入観をもって見てしまったわけです。確かにこういう作品は、いままでなかった。
多分、こういう作品があったから、「バットマン・ビギンズ」のような作品も作られるようになったのでは、と深読みしたりしてみます。
具体的な内容としては、冒頭のブルース・ウィリスが女性のスカウトをナンパしようとするところですでにカメラのたるい動きにややうんざりしたり、サミュエル・L・ジャクソンの髪形に爆笑したり、地下鉄の階段を転げ落ちる時の骨折の音に「イテっ」と思ったりしました。あと、奥さんと息子との間がぎくしゃくしてる、という家庭不安の理由がよくわからなかったりするので、やはりこれは奇妙な作品です。最後の最後のどんでん返しは、確かに驚かせるよな性質のものですが、もっと早くそれを悟ってもおかしくないプロットだよなぁ、と妙に冷静に揚げ足取りをしてみたくなったりします。
特典でついていた、カットされたシーンを見ると、それらの疑問のいくつかは解消されるのですが、それにしても、です。「アンブレイカブル」というタイトルからは、どんなことにあっても死なない、という「ダイ・ハード」を皮肉ったような人物像が浮かび上がるのですが、それと「無限の体力がある」「人の体に触ったらその人のやった悪行がわかる」とかいう、超人的な力とかはあまり関係ないんじゃないかと。それに、人生四十何年も生きていて、そのことに初めて気づくのってどうなんだろうとか。あっ、言っちゃった…。でも、見たい人はいるかも知れない。