
相棒の海月及介は相変わらず話そうともせず、ぼーっとしているだけ。常に考えてはいるらしい。相変わらずの鈍感男に、淡い思いを抱く加部谷は今回もさまざまなアタックを仕掛けるがことごとく玉砕。この辺のかみ合わない会話と加部谷の語彙不足な感じは相変わらずおかしい。こういう会話の妙が森博嗣を他の作家と区別させるのだと思う。ある意味現代の学生気質をそのまま持ち込んだような若さ、青臭さがある。
最後に西之園萌絵と犀川創平の二人が登場するあたりで、トリックのクライマックスを迎える。このあたりの犀川の名探偵振りは見ものである。
ちょっと「笑わない数学者」を思い出すところもあるが、一気に読めて、それほどの不満は残らなかった。萌絵の叔母の佐々木睦子、意外な曲者なのでは、という気がしてきた。S&Mシリーズは序章に過ぎなかったのか?