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村上春樹の「ノルウェイの森」、実は流行っているころにはあまりに誰もが読むのでなんとなく面倒くさくなって、今の今まで読んでいなかったのですが、たまたま中古で簡単に手に入ったので読んでみました。当時は誰もがあの緑と赤に塗り分けた上下巻を手にしてたもんです。

最初の100ページほどを読んで、「あれ?」となりました。この小説、絶対読んでないのに読んでる気がするのです。しばらく考えた気づきました。以前感想を書いた、「螢・納屋を焼く」に収録されていた、何編かの短編がモチーフになっていたのです。直子も、キヅキも、突撃隊もその原形をすでに短編の中に現していたのです。当時そのことに気づいた人はあまりいなかったように思うので、それは村上春樹の小説が、『ノルウェイの森」以前にいかに読まれていなかったか、ということでもあるかも知れません。

もちろん、だからずるい、とかそういうことにはならないので、それらのモチーフを用いて一つの長編にまとめ上げるのはまた別な苦労があると思います。事実、この長編から受けるのはやや散漫な印象で、以後のこの作者がまとめ上げる「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」などに比べると、ややぎごちない語り口のように思えます。

よく言われる、セックス描写のことなどもあるのですが、この小説を読んで共感してしまうのはむしろ、信じていても満ち足り切れない渇望、自分が必要としている相手が自分を必要としているのかを知ることが出来ないもどかしさ、の部分だったりします。ワタナベくんの会話部分は非常に機知に富んでいておもしろかったですね。この小説以降、彼のような喋り方をする大学生が増えたかも知れません。

もうひとつ、「あれ」と思ったのは、「人生はビスケットの缶みたいなものよ」というセリフがあったことで、これはもしや「フォレスト・ガンプ」がパクったのじゃないだろうか、と思ってますが、皆さんの意見はどうでしょうね。