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いまごろになってなぜ見てるのかと言われても説明ができないのですが、ブレイク・エドワーズ監督の「Son of the Pink Panther」を見ました。

見た理由といえばただ一つで、それはロベルト・ベニーニが出演しているから。近年では「ライフ・イズ・ビューティフル」の名優として有名ですが、この映画が作られた1993年頃まではイタリア・ローカルでの人気コメディアンとしてのステータスしかなかったでしょう。僕が注目したのはジャームッシュの「Night on Earth」と、ベニーニがマフィアのボスとスクールバスの運転手の二役をこなした「Johnny Stecchino(ジョニーの事情)」に出演していたから。この辺での彼のおかしさはちょっとたとえようがないくらい。言葉の勘違いと、スラップスティックな動きが、秀逸な脚本に助けられて、ベニーニの良さを際立たせていました。

多分そのあたりが着目されて、ピーター・セラーズ亡き後のこのシリーズの継承をもくろんでキャスティングされたのだと思います。たしかに人材としてはこれしかない、と言えるような抜擢でした。確かにいくつかのとてもおかしい瞬間があり、それはベニーニの反射神経によって達成されていると思うのですが、結果はやや寂しいものに終わったようです。

まあ、クルーゾー警部の息子が見つかった、ということを大きな縦軸に設定せざるを得ない時点ですでにかなり厳しいのですが、問題はそれよりも悪役が引き起こそうとしている事件の質とその中での悪事の必然性があまり感じられないところでしょうか。描く対象がかつてのクルーゾー警部の仲間たちに偏ってしまって、さらわれた姫君がどうなろうと、対してやばいことにはならない、というのが見えてしまっているからかも知れません。

そういう意味では近年のハリウッド製のクライム・サスペンス物に馴らされている感覚からは遥かにスローペースで、見せ場への持っていくやりかたがもたもたして見えるのですな。簡単に言ってしまうとそれがピンクパンサーの時代の古さでもあるのかも知れませんが、むしろ多くの問題は脚本にあったのでは、と思いました。ベニーニには彼の良さがあるから、ヒットしていればシリーズ化も可能性があったと思うのですが…。