今日のニュースの中で異色だったのは、第17回日本ファンタジーノベル大賞を辞退した人の話です。読売新聞と清水建設が主催で、後援は新潮社、ということですな。どうも、選ばれた琴音さん(29)と新潮社の間で、出版形態や販促の方法で折り合いがつかなかったため、辞退という事態にいたったらしいです。

まあ、こういう賞で受賞した作品、というのを出版社が出版したいのは当たり前の話で、もしかしたら金のたまごを捕まえた、というような気になる会社も多いでしょう。ただ、こういう若い世代の作家さんの中では、ウェブやDTPなど、大手出版社とのコネクション以外に読者に到達する手段がいろいろある、という現実も次第に明らかになりつつあります。たまたま大賞を受賞した人だから目立ちますが、出版社との印税の契約や、作品に対する思い入れの表現の仕方など、作家がイニシアティブを取ってやっていく例と言うのは年々増えてきているのではないでしょうか。京極夏彦さんが、もともとは装丁を専門にしていた人で、ページの終わりは必ずセンテンスを終わらせるように書いている、というのも独特なこだわりで、この人らしい美学です。

そういう意味では、今回の出来事は、出版と言う世界を根底から揺るがしかねない出来事なのかも知れません。サイバー出版時代の幕開け、という意味で。