
取り立て屋から映画プロデューサーに転身して成功したチリ・パーマー(ジョン・トラボルタ)が、あるクラブで一目ぼれした歌手リンダを悪徳プロデューサー(ハーヴェイ・カイテル)の手から救い出して、成功を収めるまでを描いた、業界サクセス・ストーリー。途中にチリを亡き者にしようとする殺し屋が次々と差し向けられるが、なぜかみんな間抜けに失敗する、という話。冒頭で殺されてしまう音楽プロデューサーがジェームズ・ウッズだと思うのだけど、オフィシャル・サイトを初め、どこを見ても載ってない。その未亡人役はユマ・サーマン。「キル・ビル」に比べると、やや老けた印象が。それでも最後の方には見慣れてきて、キレイには見れるんだけど。
リンダの元マネージャー・ラジ役のヴィンス・ヴォーン(「ドッジボール」にも出演)とそのボディガード・エリオット役のザ・ロックがオカマネタでいい味を出している。この二人がつまらないと、全然間の持たない映画になったのでは。ほとんど本筋のすべてにからむ間抜けぶりを発揮していて、二人が本格的に「出来る」悪役ならば、チリ・パーマーの命は瞬時に消えてなくなっていただろう。同じく悪役プロデューサーでハーヴェイ・カイテルが相変わらずの健在ぶり。
この映画で一番見るべきは音楽なのだろう。スティーヴン・タイラーの堂々たる演技と、リンダとエアロスミスの共演による「Cryin'」はクライマックスを作っているし、ブラック・アイド・ピースの出演シーンや、MTVアワーズの受賞シーンなど、ぜいたくな作りが満載。トラボルタとユマのダンス・シーンもセクシー。
まあ、何でも口八丁手八丁で丸め込んでしまう、チリ・パーマーのカリスマぶり、というのはあまり十全に発揮されているとは言えない(実際、成功しているのはエリオットを役者にしてやる、とノセる部分と、スティーヴン・タイラーを口説く部分ぐらいか)のだけど、それでもトラボルタの愛嬌のようなものは全編を通じて顕在か。なんか007の音楽業界モノ、みたいな気がしてきた。
唯一ストーリー的に後味が悪いのは、ラップ界の大物シン・ラサールが、ロシア・マフィアを説教した後で射殺してしまうシーン。黒人の音楽業界が危ない世界だ、という話に落ち着けてしまったみたいで、アクション的にもひねりがないし、ちょっと残念だった。