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最近はレコーディング費用もバカにならないということで、新しい録音をするよりも秘蔵音源の発掘がさかんなのだそうだ。特にクラシックなどオーケストラの人件費はバカにならないとかで、ラジオなどで放送されたライブ音源をそのまま自主的にCD化するオーケストラも出てきている。ロンドン交響楽団のチェリビダッケとの録音もプライベート盤という位置づけで11枚組が発売されたが、個人的にはこれは歓迎すべき傾向と思っている。

もちろんオーケストラにとっての独自収益、というのも運営のためには必要で、そのためにはレコーディングとかした方がいいのだろうが、ただCDを出すため、という流れ作業で行われるレコーディングにはなかなか意義を見いだせないのも事実だ。中にはベートーベン交響曲全曲を何回レコーディングしたかが威張れる人もいるのだろうが。

そんなわけで、テンシュテットの北ドイツ放送交響楽団とのライブ音源でベートーベンの交響曲7番とモーツァルトの交響曲41番をカップリングしたCDが手に入ったので聞いてみた。

ベートーベンについては、クライバーなどの疾走系をいくつか聞きなれていたこともあり、北ドイツのオーケストラの音色というのは若干もたもたした感じもするが、なによりもいいのは音離れのいい、解放感だろうか。細かいリハーサルでぎりぎり締めつけた感じというのがなく、特に低弦がたっぷりと鳴っている。クライバーはどちらかというと子供のような若さ、という感じだが、テンシュテットのアプローチは細かいところから入るのではなく、つねに全体を見渡しての構成がしっかりしているところだろうか。このオーケストラとけんかして別れてしまったというのが信じられないような、良好な響きがする。マーラーでもそうだが、この組み合わせではオーケストラを分解的に聞く、というよりはじっくりと煮込んだスープのような、濃厚な溶け合いが味わいになってくる。

面白かった効果は、4楽章の最後の追いきりのところで、他の人では決して聞こえてこないようなトランペットの裏打ちのリズムが聞こえてきたところ。単音だからちょっと間抜けなのだが、これがあるとないとでは大違いである。面白い試みだと思った。

モーツァルトも、最近の古楽ブームを一蹴するような大オーケストラの醍醐味を十分に味わわせてくれる。もちろん、細かいフレージングも十分に整えて、シーンの変わり目をよく見せてくれるのがテンシュテット流。4楽章の二重フーガに入る直前にふっとテンポを落とすところなど、絶妙なはまり具合だ。

せっかくのライブ音源なのに拍手はカットされてしまってるが、生かしてもいいんじゃないかなぁ。