ここしばらくで最大の掘り出し物。傑作である。

ジャクソン5にいそうなアフロの黒人の青年がいきなり持っている鞄を押さえようとしている。なんとなくパントマイムで鞄が勝手に動いているように見せてるっぽいのだが、それがそうではない、とわかるのは鞄からボールが飛びだすから。このボールの動きがまた地下の駐車場だったり、石造りの建物の中だったり、廊下だったり、とにかくいろんな所を飛び回る。バウンドの方向など、厳密にはあり得ない角度もあるのだろうが、そんなことはあまり気にならず、一人の、いや一個のボールの逃避行のドキュメントとして十分見ごたえがある。

このボールの運動する様子をみていると、子供の頃にやったブロック崩しというコンピューターゲームを思いだす。同じループの動きを繰り返しているようで、ぼくらは少しずつ変わっていく。ボールの微妙な角度でどんな動きも可能なように、僕らの人生も無数のバリエーションを得て、自分だけのエンディングに向かっていく。そんなことを思わせる。映像の加工の仕方もフィルムっぽくて面白い。