ついにあれが日本でもできるようになるらしい。iTMSいわゆるiTunes Music Storeである。iPodを持っていてもiTunesでCDを聞いていても、日本にいる限り何らかの疎外感を感じ続けていた、その最大の障壁がなくなろうとしていることには、ある種の達成感はあるが、音楽の所有・購入に関する根本的な思想の転換点となる可能性も十分にある。

しかしながら、正直な話、今のところ、これが日本でCDに取って代わる予感はあまりしないのである。

なぜだろう。一つにはアートワーク、ジャケット、歌詞カードなどの不在だろうか。日本人は世界的に見てもコレクター的気質の購入層が厚く、買ったものは大事にしまっているケースが多い。オークションなどで出品される中古品を見ても、ここまで神経質に物を保管し、中古品の傷をチェックする国民は他にないだろう。そういう国民だから、おそらくデータの形で曲がありさえすればいい、という実質主義的な音楽の保有の概念にはあまりなじめないと思うのだ。

もう一つは音質に対するこだわり。aiffなどの大きいデータならともかく、mp3のような圧縮された軽いデータに対しては、CDからの1次コピーの音質としては満足しても、わざわざお金を払って購入した曲の音質としては納得できないのではないだろうか。元データが手元にある、という実感をもてない可能性がずいぶんある。

最後に価格である。例えば1曲あたり150円でダウンロードできると、シングル曲などでは、相当お得感があるだろうが、アルバムとしてはどうだろうか?

多分シングルのヒット曲は飛ぶように売れるが、薄利すぎて利益らしい利益は上がらず、アルバムはCDとして購入、というスタイルのほうが定着しやすいような気がする。

まあ、それでもいい、という時代がしばらく続くかも知れない。その鍵は、扱うツールの手軽さや操作性のよさなど、音楽とは別のファッション的要素になると思う。