
先入観なしにみていたら、おやアンソニー・ラパッリアがエンパイアレコードの店長ジョー役で登場。イノセント・ブラッドの頃に比べるとずいぶん貫録がついている。怒鳴り方なんかは、イタリア系俳優の大先輩アル・パチーノを意識してるんじゃないかと思われた。
エアロスミスのスティーブン・タイラーの娘が出ているというので話題になったような記憶があるが、そういうポイントを抜きにしてもバカバカ音楽映画としては十分に楽しい。
初めは若者がバンドでも組んで成功するまでをだらだら描くようなサクセスストーリーかなと思っていたのだが、そういう性質のものではなく、あるレコード店の経営危機を描きながら、むしろ若者の中に秘められた罪悪感や欲望を次第に解き明かしてゆく、というものだった。現実の資金不足、というきっかけの怒り方は間抜けだが、その事件への対応ぶりを通じて、店長ジョーの人間味も次第に分かってくるし、一見優等生のコリーのクスリ依存症、自殺願望の娘への対症療法など、若者ならではの試行錯誤ぶりは好感が持てた。実際に有効かどうかは別だが、こういうポジティブさは見ていて気持ちがいい。AJの告白シーンなどは、今どきの若者っぽくて初々しいし、そういう感覚の監督なのだな。ドラマの縦の筋というものを真剣に追おうとすると、レコード店の危機じたいがどう解決されるか、という所にシビアーにならざるを得ないのだけど、本当は大事なところはそこにはない。哲学者のルーカスが言うように「このレコード店は資金があってもなくても危機にあった」のだ。いわば集団セラピーのようなことをある事件をきっかけに行った、ということか。最後はなんかヒロシの告白芸に近いかも。
元スターのカントリー歌手みたいなのがでてきたり、案外そういうのが好きな人々がレコード店に殺到したり、田舎の典型的アメリカ人の群像がどういうものか、ということにも自覚がある人々が作っているのだなぁと思った。アメリカ人自分を客観視出来るじゃないか。