
歴史にもしもがあったなら、という前提で言えば、「もしもティム・バートンのバットマンが作られていなかったら、シャドーは大ヒットしていたかもしれない」という言い方も出来るか。ちょっと安っぽいところはたくさんあるのだが、嫌いになれない、愛すべきダークファンタジー・ヒーローものである。
アレック・ボールドウィンというやや渋めの二枚目を元ワルのヒーローにして、世界制覇を企むジンギス・カンの末裔シワン・カンにジョン・ローンというやや豪華キャスト。ヒロイン役のペネロープ・アン・ミラーはやや美女ぶりが古くさいかも。まあ、時代物だからね。他に「ドリーム・チーム」のピーター・ボイル、「ロッキー・ホラー・ショー」「レッド・オクトーバーを追え!」などのティム・カリー、懐かしかったのがテレビシリーズ「アルフ」のお父さん役のMax Wrightが博物館の研究者役でちょっと出演した事。
ストーリーとしては、中国(チベット)で悪の限りを尽くしたアレック・ボールドウィンが聖者タルクに改心させられ、ふしぎな力を身につけてニューヨークで悪を退治する、というもの。そこにシワン・カンがやってきて、原子爆弾で世界を脅迫する、という話。
映像的には「影」の演出にこだわっていて、なかなかスタイリッシュ。第2次大戦前のニューヨークが舞台なので、ロケーション的にいろいろと苦労したのではないだろうか。シャドーが影のようになって、相手を打ちのめす映像効果はなかなか楽しい。いくつか弱点らしきものもあるのだが、悪者はあまり細かいところはつつかないで大ざっぱな作戦であくまでも攻める。シワン・カンもいろいろと複雑な力をもってそうなのだが、最後の方になると原子爆弾の力を頼りにしすぎて、だんだん小悪党になっていってしまうのがちょいと残念。でも力のあるスタッフ・キャストが予算を欲張らずに楽しみながら作った感じは伝わってくる。
エンディングテーマを歌っているのがTaylor Dayneというのもマニア心をくすぐる。一瞬Nicki Frenchかとも思ったのだが。