MEMORIESというイタリアの長寿海賊盤レーベルから入手したので聞いた。ミュンヘンフィルとの1991年の9月14日の演奏だそうだ。もう14年前か。カップリングは81年の10月4日の交響曲9番。確かこっちはかなり有名な演奏で、FMでも放送されたし、早くからEXCLUSIVEなどで海賊盤が出ていたはず。MORGAN'Sの幻想交響曲では音の悪さに辟易したが、ここはさすがに聞きやすい音源だ。しかも裏を見ると「Society for the study of Sergiu Celibidache」という所から音源提供を受けているらしい。海賊盤なんだかなんなんだか。

で、3番の方。帯には「晩年のしみじみとゆったりとした彼岸的演奏」うんぬんとあるのだが、聞いてみてびっくりした。

ずいぶん普通だ。

実はFMで以前シュトゥットガルト放送交響楽団との演奏をきいたときはこれどころの騒ぎではなかった。それこそ1980年か81年の演奏で、それはそれは精妙な演奏だった。フレーズの最後をしつこいほどディミヌエンドをかけて、ホールエコーを補うかのよう。残響も適度で聞きやすかった。ほとんどはピアニッシモ。そのかわりわずかな爆発どころはすさまじく、テンポの動かし方も大げさだった。もちろん叫び声も盛大に入っていた。

今回のCDに入っている演奏、それと10年の隔たりがあるとはいえ、テンポ設定はあまり変わっていない。このシンフォニーを乱暴に演奏する指揮者がたくさんいるから、それに比べたら「ゆったりしている」とは言えるだろうが、これはチェリビダッケの最晩年の演奏とは言えまい。ホントに担当者は聞いて書いてるのかな?

その他気づいた点では、ホールエコーがだいぶ少ないこと。演奏場所はミュンヘンのガスタイクだろうか。ピアニッシモからかなりの楽器が分離よく聞き取れ、まるでスタジオレコーディングのよう。ただ、どうもオリジナル音源はアナログらしく、若干のヒスノイズっぽいものや、時々ちいさく「ジリッジリッ」といったトラッキングずれみたいな音が聞こえる。

演奏としてはかなり技術的にミスが少ない。設計そのものはかなりオーソドックスと言えるのではないだろうか。オーケストラが違うから、当然なのだが、ティンパニー、ブラス、弦はシュトゥットガルトとはだいぶ違い、フォルテでのアタックはだいぶ強い。人によってはシュトゥットガルトの方がいいと思うかも知れない。楽器同士の溶け合いがそれほど聞こえてこないので、ピアノとフォルテの差があまり伝わってこないなぁ。ホールで聞きたいと思える演奏だった。