吉野家はなんであんなに牛丼を再開しないんだろう。アメリカの牛肉でしか作れないわけでもないのに。最近またBSEの牛が見つかったことで輸入再開はまた遠い道のりになるらしい。素人目に見ると、これは自分のところの製法や味をみんなも分かって待ってくれるに違いない、という自意識過剰から来る慢心、計算違いのように見える。そんなにみんな、牛丼の味の細かい違いになど、気づきはしなかったのだ。

かつて、コカ・コーラが伝統の味を変える、と発表したときに古いファンは大反対したらしいが、新しいレシピと、古いものをブラインドテストしてみたら、古いファンも区別がつけられなかったそうだ。あんなものを飲み続けている人間の味覚がまともなわけがない。

ところがここへ来て吉野屋、好調である。「牛焼肉丼」がその中でもお気に入りだ。これを頼むと調味料がボトルごとついてくる。たまに店員が忘れるが、これを忘れたら元も子もない。それほど重要なのがコチュジャンである。

上に載った牛肉が隠れるほどコチュジャンをかけて、肉がご飯の中に埋まるまで混ぜて食べるともう格別だ。なんだか舌がしびれるような刺激を楽しみ、無我夢中でむさぼってしまう。とくに朝から何も食べずに働いて、終電で新宿までたどり着いた後食べると格別なのだが、そんな人いないだろう。