僕の古い友人に「ニーサン」という方がおられます。

 

僕とは同い年で、今は某市役所のお偉いさんになってます。

 

そこの市役所に行ったとき、見かけるのですが、お偉いさん席に悠然と座っています。

 

で、僕を見つけると「チンピラが今日はどんな難癖つけに来たんだ」等と笑顔で憎まれ口をたたきます。

 

もっとも、憎まれ口といっても本当に嫌味で言っているのではなく、親しいゆえの冗談ですので、言われても嫌な気にはなりません。

 

なおこのニーサン、年上の彼氏とお付き合い、という話もあり、どうやらそっちの志向らしいです。

 

家は結構なお金持ち、お父ちゃんは地域の実力者、そのドラ息子というニーサンです。


なんせ20代前半で、新車のシーマを乗り回してましたから。

 

僕は一度だけ、ニーサンの立派なご自宅にお邪魔したことがあります。

 

その時、ニーサンのお母さんにお会いしました。

 

びっくりしました。

 

立ち居振る舞い、物腰、話し方、どれにもものすごく品があるんです。

 

ニーサンのお母さんにお会いしたのは20年ほど前のその時一回だけですが、僕がこれまで出会った方の中で一番「品のある」方でした。

 

だから僕はニーサンに、「なんであんな品のあるお母さんからこんなドラ息子が生まれんにゃろ」とよく言ったものです。

 

そして僕は思ったものです。

 

ニーサンのお母さんは、息子の性的志向をどう受け止められたんだろう。

 

大変やなあ、と。

 

そんなニーサンのお母さんが亡くなって、昨日がお通夜だという話が伝わってきました。

 

喪主は長男のニーサンで、家族葬だとのこと。

 

家族葬ということですので、参列は控え、ニーサンに「ニーサンのお母さんは、僕が人生で出会った人の中で一番、品のある方だったこともあり、ご逝去がとても残念です、参列は控えますが、僕の分としてお線香をあげてください」とメールをしました。

 

そうしたら、お通夜や葬儀の合間の時間なのか、ニーサンからすごく丁寧な文章の返信がありました。

 

いつものニーサンからは考えられない、きちんとした文章で。

 

僕には昔からのドラ息子で接してくるけど、やっぱりあのお母さんの息子さんなんだな、そら市役所の偉いさんなわけか、と思いました。

 

ちょっと見直しました。

 

母親を亡くすことは、人生で最もつらいことだと思います。

 

ニーサンのお母さんのご冥福と、ニーサンがこのつらさに負けないようにと思います。