かつて、或る、ホームレスは私に言った。

 

「普通の人は、俺みたいな奴に声なんかかけない。」

 

「それができるのは、同じ苦しみを乗り越えてきた人間だけだ。」

 

「あんたは、このヤマを越えたら、必ず成功する。」

 

今も、その言葉を覚えている。

 

そうだ、私は、路上生活者の状態から、這いあがってきた。

 

路上に転がっているあの人達と、私との間に、何の差も無い。

 

同じ、人間です。私は、何者でもない。

 

 

今日、或る女性に、自分が噂されているのを耳にしました。

 

私が傍に来ると、口をつぐんだようですが。

 

私は、気付かなかったフリをして、黙っていました。

 

私は、この場で言います。

 

「私の苦しみを、あなたは共に背負ってはくれない。だから、あなたは私の伴侶たりえない。」

 

 

精神障害者として生まれて来た苦しみを、あなたは共に背負ってくれるのか?

 

常に幻覚と妄想に苛まれ、実の家族からも、狂人として扱われる苦しみを、あなたは共に背負ってくれるのか?

 

それでも、未来に対する希望を捨てずに、骨を折って、血を吐いて働いて、でも、そんな努力は無駄だと嗤われる苦しみを、あなたは共に背負ってくれるのか?

 

障害者としては働けても、健常者のレベルとしては働けないが故に低収入で、さらに、経済力が乏しいのを一番に判っている両親から、お前は障害者なんだから、血を残さずに死ね、結婚するなら、家を出て行け、そう言われて、特に家族の協力が一番要る、家事育児といった部分で頓挫するために、家庭を築けないという苦しみを、あなたは共に背負ってくれるのか?

 

そんな自分に対して、あなたは経済力も無いのに綺麗事ばっかり、と言われて、過労で扁桃炎で入院、熱中症で3回病院送り、そこまでして養おうとした女性に見切りを付けられて、自分の事は綺麗に忘れて、別の男と仲良くベッドを共にする様を見る苦しみを、あなたは共に背負ってくれるのか?

 

あなたは、何を思って、自分に好意を寄せるかは、判らないが、人生が嫌になって、衝動的に時々死にたくなる自分の傍に、本気で一生居たいと思うのか? とても、その覚悟があるようには、見えない。

 

また、世間一般の人から見れば、カネも稼げない気の狂った負け犬がよう吠えとるわ、そういう目で見られ、嗤われる男を、伴侶にして一緒に道を歩きたいと、本気で思うのか?

 

 

多分、件の女性は、そこまで考えてないし、何も知らない。イメージで、考えてる。

 

一生を賭して、尽くす相手にするには、不適当ですね。