先日

ある本の一文を読んで

ふいに涙が流れた


その本のストーリーの中で

涙を誘う場面だった訳ではない


なので

「もしかしたら泣くかも」

みたいな心の準備なども無く

無防備な軽い心持ちで

その一文を目で追っていたら

自然と涙が溢れていた


作者が父と口論になった際に

「お父さんのことも尊敬してないから」

と言った後のくだりである


本当は尊敬していたのに

ついそんな言葉が出てしまった

みたいな一文が続くのかと

勝手に想像しながら読み進めたら

全然違うことが書いてあったキョロキョロ

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本当のことを言えば、

父のことは「尊敬」も「軽蔑」もしていなかった。そんなこと、考えたこともなかった。

昔から、ただ大事な父だったのだ。


引用:

「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」(三國万里子)

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この何てことない一文を読んで

先日亡くした父への思いが

私の心の奥底からふと出てきたのである


私にとって父が

尊敬とか軽蔑とかではなく

ただただとてつもなく『大事』な存在だった

シンプルなその事実を

今頃改めて再認識させられた


大事な存在

大切な存在

とてもとても大事で大切な存在

そんな分かりきった当たり前の事を

今更思い知らされたような

何とも言えない感情になった


この一文を読んで

一筋の涙が静かに流れたその時に

『大事』とか『大切』とかいう言葉が

今まで自分が感じていた父への感情を表現する

一番シンプルで一番近い

そんな言葉のような気がしてきた


そして

大切な人が亡くなったという事実は

こうしてなんて事ない瞬間に

ふいに認識させられて

そのたびにふと心の隙間を

感じるものなんだと思い知らされた


でも

こうしてふいに「心が動く」

というのはとても人間らしくて

なんとも言えない

そんな瞬間でもあり


そこからまた

新たな一歩を踏み出す

そんな力にもなる瞬間で


「お父さん

 今日も私頑張ってるよ」


心の中で父に語りかけたら

父にちゃんと繋がってるような

そんな不思議な感覚になった


そして

「お父さん、ちゃんと見ててね」

自然と背筋が伸びて

また次の一歩を力強く踏み出せる