ー やっぱり、降ったのね ー
大きなため息をつきながら雪をかく
今年は、まだまとまった量の雪が降っていなかったため
喜んでいたのだが
一昨日の夕方
「今日の夜から明日の早朝にかけて雪になるでしょう」
パソコンを打つ手を止めて
流れてくる天気予報に耳を澄ました
「2〜3日続くでしょう」
ー とうとう雪降るんだ。それも2~3日も ー
予報を聞いてから
ー どのくらいの量降るんだろう。腰、大丈夫かな ー
昨年、腰を痛めたことを思い出し、腰をさする
ー 今年は気をつけよう ー
そんなことを思っていた一昨日。
昨日、朝目が覚めた時、まず、最初に耳を澄ます
ー 雪は降ったのか ー
聞こえる除雪機の音
ー 降ったのね ー
覚悟を決めて飛び起きた
慌てて身支度をして玄関のドアを開ける
ー 降ってる降ってる ー
寝起きの身体を起こすため
朝食を摂り温かい飲み物を飲む
気合いを入れて外に出て
今期初めての重作業
一年ぶりの手応えのある除雪
それが昨日の話。
そして、今日
連日の除雪とあって慣れたもの
昨日のように身支度を整えて外へ出る
ー 今日も結構降ったのね ー
まずは玄関前の階段から
黙々と短調な作業をしていると昔のことをふと思い出す
ー 雪が降った朝は毎回喧嘩していたな ー
子供達がまだ小学生の頃
いつもより少し早めに前夫を起こす
学校へ行く前に道をつけてもらいたかったから
でも、なかなか起きなくて
朝食の準備をしながらの声がけが
だんだんと大きくなっていき、喧嘩になっていた
ー あった、あった ーと懐かしむ
もう昔の話
今は子供達もすっかり大人になり
前夫ととも、それぞれ別の道を歩いている
思い出し笑いをしながらのんびり雪をかく
こんをつめると腰を痛めるので
あくまでもゆっくりだ
あたりを見回すと数軒の人たちが
同じように除雪をしている
途中、通り過ぎる人と挨拶を交わす
ー 今日はもう雪はいらないな、週末も降るのかな ー
そう思う金曜日。
土曜日の朝、布団の中で考える
ー 天気予報では2〜3日って言ってたな。今日はどうかな? ー
腰をさすりながら起き上がる
朝の準備をしながら外の様子を伺う
ー 少し!少しでよかった ー
朝食をとりコーヒーを飲んで、立ち上がる
外に出ると気持ちの良いくらいに晴れている
視界には親子で除雪をしている姿も
ー そうか今日は土曜日だからね。
私もよく子供達と一緒に除雪したな ー
子供用のスコップや小さいママさんダンプを
押していた子供達を思い出す
遊びながら手伝ってくれていた二人を思い出す
小さなスコップからいつの間にか大人用になって
時間の経過の早さを改めて噛み締める
あとは車の上の雪下ろしだけを残し
ひと通りの作業を終え
ー いい天気 ーとひと息つく
その時にふわっふわっな大きな雪が落ちてきた
結晶の間に空気がたくさん入っているような
本当にふわっふわっな雪だ
ー あっ雪 ー空を見上げると
ちょうど太陽が隣家の庭の木の真上に来ている
葉の落ちた枝にふわっふわっな雪が
白い大輪の花のように咲いている
陽の光も重なって輝きながら
ゆっくりと落ちてくる
儚げで悲しいくらいの美しさだ
見上げた顔の上にも
次々とゆっくりと落ちてくる
そしてすぐに溶けて水になる
涙のように
泣けてくる
濡れた頬を両方の手袋で拭い
また黙々と車の雪下ろしを始める
そんな土曜日。
日曜日、雪は降らなかった。
悲しみが少しでも癒されますように
一日も早く日々が戻りますように