親が子を殺し、子が親を殺す時代。先日、山口県で16歳の高校生の孫が祖父を殺害し、遠くはなれた秋葉原で万引きをしたことが切っ掛けで、逮捕されたのです。少年は「素直でまじめ」(校長)という評判。またもや「普通の子ども」の凶悪事件が発生してしまいました。しかも、祖父から「ゲームをしないで勉強しろ」と注意されたという、ささいな動機が引き起こした事件です。祖父はその少年のことを思って言っているにも関わらず、「うるさいから殺害する」と短絡的に殺してしまったのです。そこに至るまでに、家族で話し合いを持つことが出来なかったのでしょうか。とても残念です。




「おじいちゃん、おばあちゃんを大切にしなさい」と、親や親戚から言われて育った私たちの世代には考えられないことです。そういえば、「目上の人を敬う」という子どもが減っているように思えます。ここ数年、大学生が沢山利用する路線で、電車に乗っている際、大学生は老人が乗ってきても席を譲ろうとしないのです。それより、かき分けて自分の席を確保し、椅子から滑り落ちるようなだらしない格好で携帯に目をやりながら、足を広げ周りを気遣おうとしないのを頻繁に見かけます。また、小さい子どもを連れているお母さんも、いち早く、椅子を確保しようと子どもを走らせたりと、目上の人への気遣いなど微塵もありません。子どもが席に座ると、外の景色を見るために窓の方を向かせるのは良いのですが、靴を脱がせないため、靴の裏が隣の人のスカートや鞄に当り、それを知っても謝りもしないのです。電車は公共の乗り物だということを忘れているのかと思ってしまいます。




 残念ながら、逮捕された少年も勉強中心に教育され、我慢することなどの社会性は放任されていたようです。「普通の子ども」による凶悪犯罪に歯止めがかかりません。写真は今月号の「中央公論」での私の記事です。タイトルは「危うい、お受験ファミリー 親殺しの現場から」というショッキングなタイトルですが、内容に関しては今まで取材してきた事件の共通項と法則性を述べた記事です。是非、ご一読下さい。 草薙厚子