20数年前、京都の撮影所。

中条きよしさん主演の映画で、
早朝から深夜までの撮影スケジュールと、初めてのメインキャストでの映画出演の緊張と、もういっぱいいっぱいだった毎日。


私のお父さんは森山周一郎さん演じるヤクザの組長で、
誘拐された私を救うためにやってきた父親の森山周一郎さんが、娘と見つめ合う長い長いシーン。


撮影の途中、森山さんがすすすと寄って来られて、
「君は舞台出身の人?」


あ、お芝居が違ったのかな?!
映像ではダメなお芝居したのかな?!

「はい!」


「いいよ、いいよ、君が無理ないならそのままやりなさい。君が思う好きにやりなさい。僕は嬉しいから。」と

ニコニコ去られた。


去り際に、
「カメラが向いてない時は芝居しなくてもいいんだけどね」と(笑)


ああ、そうか(笑)!
カメラに映ってない時は芝居しないもんなのか(笑)!




なんにも知らないゆえなんでも現場で学ぶわけですが、
あまりにもなにも知らずにいることに恥ずかしさすら感じるところ、

「そのままでいいよ」と言ってくれた森山さんの優しい言葉に、本当に感動しました。



優しい素敵なお声。

いまも思い出します。


ご冥福をお祈りいたします。