ハイハイの井上瑞稀くんの、

小学校低学年の頃の話。

 

発端は、

彼が「品川からなら一人で帰れる」と

言ったことだった。

 

じゃ、品川経由で帰る人と、

一緒に帰ってもらおう、ということで、

ストの松村北斗くんに

白羽の矢が立った。

 

ストの北斗くんは、

「瑞稀くんを品川まで送る役目」を、

引き受けてくれた。

 

だけど、車内で、

北斗くんは話さない。

北斗くんが話さないから、

瑞稀くんも話さない。

話せない。

 

沈黙の時間。

 

たぶん、関西ジュニアで、

同じシチュエーションなら、

しゃべらずにはいられない、と思う。

おしゃべりが上手だから、ではない。

沈黙に耐えられないのだ。

 

で、その沈黙の時間。

こそばゆい時間。

1メートル先にいる、

お兄ちゃんみたいな人と、

話さないけど、一緒にいる、というか、

独占している時間。

 

その話を瑞稀くんが、

少クラでしていたのだけど、

今、思い返してみて、

もしかして、

北斗くんも覚えているかもって思った。

 

北斗くんは、

覚えていたとしても、

死ぬまで話さない。

そんな気がする。