自然と歴史

中央部を山地が縦断するマレー半島南部の西カリマンタン(ボルネオ)島北部のサバ,サラワクからなる。山地が多く,国土の約70%は熱帯雨林で,気候はAf気候。1957年にマラヤ連邦として西マレーシアがイギリスから独立。1963年に東部を合わせてマレーシア連邦となる。

 

産業と現状

パーム油・天然ガス・原油などの一次産品輸出国で,農地は樹園地が多い。ルックイースト政策により工業国へ転換を図り,電子機器・電気機械工業などが成長。さらに2020年までに先進国入りを目指す「ビジョン2020」を発表。経済界の実権を握る華人に対してマレー人優遇のブミプトラ政策をとり,格差是正を図る。

 

キナバル自然公園

マレーシア政府は耕地の開発を制限して,熱帯雨林の保護に取り組んでいる。カリマンタン(ボルネオ)島の北部にあるキナバル自然公園には熱帯雨林から高山帯までの多様な動植物が見られる。

 

東南アジアのスコール

熱帯の日差しは強い。強い日射しで熱せられた地表が大気を暖め,上昇気流が生じて雲が湧き,やがて激しいスコールが降る。スコールはほぼ毎日,午後に発生するが,大粒の雨は短時間におさまり青空に戻る。

 

油やしのプランテーション

マレーシアやインドネシアは油やしの一大生産地。油やしからとれるパーム油は,石けんや洗剤,マーガリンなどの原材料のほか,近年ではバイオディーゼルの原料としても注目を集めている。一方,パーム油の需要増に伴い,広大な農園をつくるために,ゴムのプランテーションから転換したり,熱帯林を伐採したりしている。新たな環境破壊を引き起こしているという指摘もある。

 

天然ゴムと油やしの生産

20世紀初頭に自動車の大量生産が始まると,タイヤの原料として天然ゴムの需要が高まった。イギリスはマレー半島にゴム園を開き,インド人労働者を連れてきて生産を始めた。それ以降,マレーシアは生産量世界一であり続けたが,ゴムの木の老化したことやパーム油の価格が堅調であったことから,1980年以降,油やしへの転作を進めた。その結果,天然ゴムを増産したタイやインドネシアなどに抜かれた。天然ゴムと油やしは,熱帯性の気候が栽培に適することや,収穫直後の加工の必要性など,栽培条件における共通点が多い。

 

天然ゴムの収穫

自動車産業の発達につれ,イギリス企業により東南アジアを中心に展開した。合成ゴムの普及で農園は減少したが,石油価格の上昇で再び需要と生産量が増えている。

 

熱帯林の搬送(サバ州)

日本のラワン材などの熱帯林の多くをインドネシア及びマレーシア(生産地はサラワク州,サバ州)から輸入しているが,その大半が合板類である。これらの国では商業伐採や油やし農園造成のための熱帯林の伐採が進み,環境破壊が懸念されている。

 

マレーシアの鉱工業

マレーシアは従来,石油・すず・天然ゴム・木材などの一次産品の輸出に依存していたが,1980年代からは日本や韓国を手本とする「ルック・イースト政策」を進め,工業団地にエレクトロニクス企業を誘致するなど,マレー半島を中心に工業化が進められている。首都クアラルンプール近郊のサイバージャヤ地区には,ICT関連企業が集積している。

 

クアラルンプールの街角

マレーシアは,先住民のマレー系(ムスリム)・イギリス植民地時代に移住したインド系(ヒンドゥー教)・中国系(仏教徒ほか)の人々からなる多民族国家である。経済的に優位に立つ中国系の人々に対して,マレー人を優遇するブミプトラ(「土地の子」の意)政策が実施されてきた。

 

経済成長するマレーシアの首都クアラルンプール

マレーシアは輸出加工区に外国企業を積極的に誘致し,電気・電子工業を発展させて経済成長した。郊外にはハイテク関連企業が集まる新興都市サイバージャヤがある。高層化が進展する中心市街地の一角に高さ452mの「ペトロナスツインタワー」があり,この都市のランドマークになっている。

 

 

 

 

「マルチメディア・スーパー・コリドール」構想

首都クアラルンプール周辺に,ICT産業の拠点となる総合開発地域(高度情報都市サイバージャヤおよび行政首都プトラジャヤなどの新興都市を含む)を建設する構想。

 

クアラルンプールを走るモノレール

交通渋滞の緩和を目的として2003年に開業した。近郊ではLRTとよばれる路面電車や高速鉄道などの公共交通機関の整備も進められている。

 

マレーシアの食事

マレーシアの料理はインド料理の影響を強く受けているため,カレーを使った料理が多い。ごはんにカレーや野菜炒めをのせて食べることが多い。

 

 

 

 

高床式の家

マレーシアのカリマンタン島にあるサラワク州では,高温多湿のため,風通しがよく浸水しにくいロングハウスを建てて生活している人々がいる。複数の家族が住んでおり,周辺には焼畑による耕地がある。

 

毎日恒例の盆踊り

現地の日本人会や日本人学校などが主催している。毎年およそ3万人もの日本人やマレーシア人などが参加し,浴衣を着て踊りを楽しんでいる。

 

 

 

 

マハティール・ビン・モハマド

マレーシアのマハティール首相が「日本人の目標を達成するため目にに努力する姿勢,成功に向かう価値観などを見習うべきだ」とマレーシアの若者に呼びかけた。マハティール首相は1981年に首相に就任した後,日本や韓国などに学ぶ「ルック・イースト政策(東方政策)」を提唱して,特に日本人の価値観,倫理,道徳などの精神面を学ぶことで自国の産業発展,人材育成に積極的に取り組んできたことで知られている。2018年5月に野党を率いてマレーシア史上初の政権交代を実現して首相の座に返り咲いたマハティール首相は「腐敗している」として打倒を目指したナジブ前政権の数々の路線を転換して「真にマレーシア人のための政治」を着々と実現している。そんななか,3月16日に「プトラジャヤ国際コンベンションセンター」で開催された「求められる連邦領での理想的若者像」という会合で演説したマハティール首相が「日本人の数ある価値観の中でも責任を果たせなかった時に恥ずかしいと感じること」を特に取り上げて説明したと国営ベルナマ通信が伝えた。