原油価格
私はよく原油価格について質問されます。
実は、ドバイが暴落する前は、ほんの10月まで、原油が40ドル台に戻ることは無いと方々のお客様に言っていました。
しかしながら、現状は皆様の知ってのとおりです。
中東の石油化学プラントは2010~2012年までに2000万トン/年のエチレンプラントを計画しています。2000万t÷0.2(エチレン収率)÷0.3(ナフサ収率)≒3億トン/年の原油需要を意味します。
ちなみに中国の年間の原油需要が2007年時点で2億トン/年であり中国は2012年までに3億5千万トンの原油を消費する計画でした。
2008年の世界原油需要見通しは40億㌧/年ですので、実に世界の5%を中国が使用し、2012年には8%に届く勢いで消費を拡大する予定だったのです。
先に述べた中東が3億㌧2012年時にて約+8%、中国が+3%で、原油埋蔵量が伸び悩む一方で消費は拡大の一途です。
これでは、誰しも原油がここまで値下がりするとは思ってもみなかったでしょう。
最近石油のフォーラムである質問をしました。「投機による売買と実需による売買はマーケットで見分けが簡単につくものでしょうか。簡単だとすれば、何か規制の動きはあるのでしょうか。」
答えは、「見分けは簡単につくが、投機筋が不正でも行わない限り取り締まることはできない」でした。実際、当局が摘発したのはオランダの金融会社(不正な価格操作による摘発)ただ一件しかありませんでした。
3大原油指標の内、ニューヨークにあるWTI原油市場では、実需による売買が7割、一方投機筋は3割もあるそうです。実需の約半分も投機資金が流れていることを意味し、これは価格を大きく変動させるに足る量といえます。
さらに、投機家たちの大原則は「相場は上下しなければ収益を得られない」です。
ここから学べることは、”数年数十年の大きな流れでは、市場は実需を反映しうるが、短期的には必ず上下する。”です。
話を元に戻しますが、現在中国は(おそらく)徐々に原油を買いを入れているはずです。中国は基本的には石油製品を輸入せず自国内に製油所を立地する計画(第11次5ヵ年計画)であり、つい半年ほど前までは、将来の原油が手当てできずに、10程ある製油所計画のうちいくつかが計画延期または無期限延期に追い込まれていました。多くの国でエネルギーは戦略物資でありますが、中国は自国の大慶原油の生産を減らしてまで、外国からエネルギーを買い漁っています。
そう遠くない未来に、中国のこの動きは顕在化し、さらに原油が40ドルを切った今生産拡大の投資も控えられているという2つの事象が重なったとき、原油は再び危機的な上昇を記録するに違いありません。
原油の埋蔵量はまだまだ未発見なものもきっとあり、生産設備さえ整えば、まだ100年はエネルギーは大丈夫かもしれません。しかしながら、後進国の省エネがすすまないかぎり、かならずやエネルギーショックが世界を襲うことは明らかです。
実需は短期的に上下しうるが一度立ってしまった生産設備は、そう簡単には減らせません。が、同時にそう簡単にも設備能力は増えないのが通例です。
太陽光や風力・水力の投資もここまで原油が下がると開発にブレーキがかかることが予想されますが、朗報もあります。原油が100ドルを超えるいきおいで高騰したために、省エネ技術や新エネルギーの技術がここにきて急ピッチで進んでいることも素材産業に携わっている私は実感できています。
パルプ使用量を極限までへらした紙おむつの開発や、高効率省スペースの燃料電池の開発(特にセルロース膜の保護材開発)による長寿命化、シリコン使用量を大幅に削減できる太陽電池等わたしの会社や私の製品を使用している需要家では日進月歩で開発が進んでいます。化学品市場はマーケットが極度に国際化していることもあり、私の知る限りではこうした開発案件は日本と米国に集中しています。ですがこの際、誰がこの開発競争に勝とうと大きな視点にたてばもはやどうでも良いことです。
不況時に強いこれら日本企業の底時からを信じたい今日この頃です。
じつは、つい先日、私の取引先の中国人(ミネアポリスの米国企業に勤務)がクリスマスを前に退職することを聞かされました。休日に私の携帯にまで電話をかけ米国企業の無情さを訴えられました(もちろん英語で、、)。彼には現在4ヶ月になる赤ちゃんもいます。これから1年間、こうしたつらいニュースはまだまだ後を絶たないと思いますができれば私と私の知り合いは全員無事平穏であることを祈っています。