母の言葉は、あたしにとって、
旦那の拳以上の凶器だった。

必殺、メンタルクラッシュ。
一撃だった。
フルポーション使っても、
ステータス異常がしつこく残る。

実はあたしって案外強いと
自惚れていた癖に、びっくりするほど弱かった。

生活費を使い込み、暴力を振るう夫。
出産を控えているというのに、
検診費用も入院・分娩費用も全て
旦那がパチンコで使ってしまった。
パチンコ屋に通い詰める理由を
お前の為に稼ごうとしてやってる』と、正当化して。

そして、実の娘の身の安全よりも、
世間体の方を優先する、実の母。
私は金も無いし田舎に来られても迷惑だから、私を頼るな』と、突き放す。

まあ、成人してますしね。
一時避難させて貰って、熱りが冷めたら
帰りますけどね。

私が子供の頃、おじいちゃんおばあちゃんから、
お金をしょっちゅう借りて(貰って)た。
当たり前のように、米や野菜を貰ってた。

私の前ではいつも「金が無い、金が無い」
そう言っていたけど、
子供の目から見ても高そうな
コートやジャケットを何着か持っていた。

中学生位のとき、
母行きつけのブティックについていったとき、
コートを一枚買うのに、
一万円札を10枚位払っているのを見た。

欲しい本があって、お願いするも
「うちにはそんな金は無い」
と、キレられたばかりだったのに。

「お金無いんじゃなかったの?」と問うと、
私が稼いだ金なんだからお前にとやかく言われる筋合いは無い。欲しい物があるなら自分で稼げ」

まあ、ごもっともと言えばごもっともですが。
中学生でしたので、
引き下がるしかございませんでした。

車を買うときにも、
おじさんからお金を出して貰ってた。
借りたらしいが、本人は返すつもりも無い。

そんな母の言葉には矛盾しか感じられず、
説得力などというものは微塵も無かった。

もはや、旦那と実母に追い詰められて、
自分1人の力で完全回復出来るほど、
精神に余裕が無かった。

何かに縋りたい。
そんな気持ちで、
財布の中からイエローカードを取り出す。

【1人で悩まないで☆DV相談ダイヤル】

そう書かれた黄色いカードを前に
一人、葛藤する。

他人様に頼る事ばかり考えて、そんなんで母親になれるの?
お腹の子を守るのに、手段なんて選んでる場合じゃない
こういう行政サービスは、本当に困っている方々の為のもの。
世の中にはもっと深刻に困っている人が沢山いる。私ごときが使っていいサービスじゃない
「意地とか見栄とか張ってる場合じゃない。お腹の子の為に一刻も早く解決するべきだ。」

私なんかよりずっと辛い想いをしながら、
悩んでいらっしゃる方々が世の中には沢山いるのに、
私なんかがこの相談ダイヤルを使うなんて
申し訳ないという後ろめたい気持ちがありましたが、
藁をも掴む気持ちで、携帯電話を取りました。

電話口に出たのは、声を聞く限りでは、
優しそうなおばさまといった感じだったでしょうか。

初めて話す、赤の他人なのに、
実の母よりも親身に寄り添って、
話を聞いて下さいました。

辛かったですね
痛い想いをされたんですね
頑張ったんですね
いいんですよ
偉かったですね

初めて話す顔も知らない相手からの
暖かい言葉に、それまで溜まっていたものが
一気に溢れ出しました。

ずっと、吐き出したかった心の叫び。
ずっと、かけて欲しかった言葉。

電話口の相談員さんのお陰で、
キレイにデトックスされた気がしました。