お義父さんが仕事帰りに家に訪ねてきても、
決まって旦那は家に居ない。
「チエさんは、Aがどこのパチンコ屋にいるのかは知らないのか?」
言おうか迷ったが、
「ここから車で20分位にある、
K工業団地入口のパチンコ屋によく車が停まっています」
「いつもAはそこに行ってるのか?」
「……だと思います。あそこは営業時間が23:00なのですが、Aが家に帰ってくるのは決まって23:20なので」
───チクってしまった。
何故か、背徳感が募る。
お義父さんに嘘をついてしらばっくれるのも、
良心が咎めるし。
どうせ、後ろめたい気分になるならと
お義父さんに本当の事を話した。
「本っっ当、アイツはどうしようも無いな」
「私が居場所を教えたことは言わないで頂きたいです」
「それは勿論だ。アイツのことだ。逆ギレして暴れたら困るからな」
………ですよねー。
そこは、内密にお願いしますよガクガクブルブル
お義父さんが帰ってから3時間程経って
旦那が帰ってきた。
21:40。
は、早い。めちゃくちゃ焦る。
どうせ今日も23:20頃だと思ってたから、
食事の支度が終わってない。
ヤバい。怒らないだろうか。
てか、どうしよう。
「チエさぁ、親父に俺の居場所言った?」
「!!!!!!!!…………………な、何で??」
「親父が今日、パチ屋に来た」
はあ?
何してくれてんの?あのオヤジ!?!?
「……へ、……へぇ……」
「親父、パチンコしないのにパチ屋にいきなり来てたまげたし。だからチエが言ったのかと」
「……や、あたしだってパチンコ屋にいるなんてAから聞いてなかったじゃん?」
「だって言ったら怒られるじゃん」
……よく言うよ。
あたしが怒ったら暴力奮うクセに。
「え、じゃあ言ってないん?てか何で俺の居場所知ってたんだ??まさかお前俺を付けてた?」
旦那が眉を顰める。
うわ、コレ絶対ヤバいパターン……
殴られるパターン……
「ま、まさかぁ!あたしそこまで暇じゃないし!
一度、ご近所さんから薬局脇のパチ屋で旦那さんに似た人を見たと言われたからさ。もしかしたらそこかも知れないって言っただけだよ(滝汗)」
口から咄嗟に出た〝ご近所さん〟という単語が、
私を救った。
「なーんだ。そう言えば上のオッサンに会った事あったわ」
マジでか!
上のオッサン、グッジョブ!!!
「で、お義父さん何の用だったの?」
追求されないうちに、話題を変える。コレ、鉄則。
「よく分からんけど、金貰った」
「……本当によく分からないね……まぁ、よかったじゃん。パチンコで使わないでよ?」
「それ、親父にも言われた」
「当たり前でしょ」
「メシまだなら、俺、マック食いたい。マック!」
「どっちでもイイよ」
*
後からお義父さんから聞いた話によると、
旦那がパチンコ屋に通い詰めていたのは、
給料をパチンコ屋で一日で使い切ってしまったため、
取り返そうとしていたらしい。
バカなの?
だから、お義父さんは
これ以上パチンコしても取り返せる訳無いんだから、
もうパチンコ辞めて家に帰れとお金をくれたらしい。
何だかなぁ……。
色々、腑に落ちない事はあるけど、
お陰で旦那は昨日、マック食べられて上機嫌だったし、
めでたしめでたし───と、いうことにしとこう。