お口の中の細菌のお話。


お口の中には何種類の細菌がいると思われますか?
ネットで調べてみても300種類だとか500種類だとか700種類だとかかなり幅のある範囲で書いてます。

まあそこの何種類いるのかを厳しく追及する意味合いは今回のお話にまるで重要ではないので少し脇の方へ置いておきます。
いっぱいいるくらいでよろしくお願いします。


大腸。腸内。いや小腸の終わりから大腸にかけての様子はお花畑に例えて『腸内フローラ』と呼ばれまさに腸内のお花畑のように腸内細菌がびっしりと敷き詰められているようです。

お口の中はその腸内フローラに匹敵する数の常在細菌がいます。


ぴんときませんね。私もぴんときません。


お口の中の常在細菌が主に生息するのは、歯肉や舌の上。歯の表面。歯肉と歯の境にある歯周ポケット。その歯肉より下に入った場所などで、バイオフィルムというバリアを張ったプラーク(歯垢)の状態で・・・そこでの細菌密度は糞便のそれよりはるかに多い・・・。すいません。汚い例えをいたしまして。

プラーク1mgの中に存在する細菌の数は1億を超えます。


細菌学的にも免疫学的にも『口腔の情報は全身に伝わり、全身の情報は口腔に伝わる』と言います。

口腔内の細菌をリンパ球(人間の防御細胞の一つ)が抗原(細菌、ウィルスやら微生物といった攻撃してくる外敵)と認識します。

腸管粘膜(腸の粘膜)を口腔細菌で刺激すると感作したリンパ球は帰巣循環経路により口腔粘膜下に移動。抗体(抗原を捕まえる糖タンパク分子。パトロールをするお巡りさんのようなもの)を産生。その結果唾液腺からは抗原特異的なIgAという抗体が、歯と歯肉の境の歯肉溝から出る歯肉溝液からはIgGという抗体が検出されるのであります。
そのパトロールするお巡りさんが捕まえた外敵を白血球やマクロファージといった必殺仕事人たちがやっつけるというわけです。

結局なにが言いたいのかというと


『口腔の情報は全身に伝わり、全身の情報は口腔に伝わる』


ということです。


腸から口腔のお話を書きましたが、逆もしかり。口腔の状態が病的であれば全身の免疫能は低下していると言えます。

お口の環境、状況の悪い人、他の場所も不健康になってますよ、病気になりますよってことです。


唾液は一日約1000~1500mlも分泌されます。唾液には抗体や様々な抗菌物質が含まれ、菌の発育を抑制。これらの抗体や抗菌物質に抵抗し、口腔粘膜や歯に付着できる菌だけがその数を増やしていきます。


細菌やウィルスに抵抗して戦ってくれるのは唾液だけじゃありません。常に細菌と接触している口腔粘膜上皮細胞は様々な抗菌因子を活発に産生し細菌の排除を行っています。歯と歯肉の境にある歯肉溝からの歯肉溝滲出液にも感染防御のものがたくさん含まれています。


因にインプラントの周りからもこの歯肉溝滲出液は現れ、その感染防御機構は量や中に含まれる好中球の数は天然歯のそれとほぼ同等です。

だから異物であるインプラントがこんなに細菌の多い口腔内で10年、15年、それ以上も維持されるということは唾液や歯肉溝滲出液などによる自然抵抗性が天然歯と同様に働いてるため・・・まあ他にも噛み合わせやらなんやらと小難しい条件は多々、多々多々ありますけども、その条件の一つであり、且つ非常に重要な要素です。

唾液の中にはそんな防御機構に関する因子が多分に溶け込んでおり、その量は残存歯が25本以上ある人は歯をすべて失った人より圧倒的に多いというデータもあります。

残存天然歯+インプラントでもその量は増えることになるので、それはインプラントのメリットですね。


要するにお口の中には大量の細菌がいて、それを唾液やら滲出液に含まれ生体防御細胞がそれらからの攻撃を必死で食い止めようとしている。その環境を整えようともせず細菌の数をどんどんと増やすことは全身の免疫系をダウンさせることでもあり、病気になりますよ。ということです。

だからどうしろと・・・なんて思ってしまうざっくりした話でした。
だからどうしましょうという話はまたのちほど。

よろしくどうぞ。