店内には軽いボサノバの曲が流れていた。外はまだ猛暑が続く。

 

真っ白く輝く外の景色をぼんやりと眺めながらコーヒーが来るのを待っていた。

 

ここのコーヒーは気に入っていた。携帯に着信音が入った。今からこちらへ向かうという彼女からの連絡だった。

 

僕は時計をちらっと見た。約束の時間を50分も過ぎていた。いつも遅刻をする。

 

いらいらしながら、コーヒーを飲み干し、ボサノバの曲を聴きながら、出口へと向かった。

 

店内の時計が2時を告げた。ドアを開け外へ出ると熱風が体を包み込んだ。

 

10分ほど坂を歩いて下り、左ポケットの白のハンケチで額の汗をぬぐった。

 

目の前を一台のバイクが通った。後ろを振り返ると十代らしき男女がバイクに乗って坂の上へ登っていくのが見えた。

 

坂の上あたりで女の子がバイクから降り、手を振っていた。

 

その光景を見るとは無しにながめ、それから素早くポルシェのドアを開け車に乗り、

東京へ向かう国道へ出た。