訴えたら勝てるって
皆、言ってくれる。
でも、裁判中、ずっと
悲しい出来事を
回想させられて、
争って行くのは、
気持ちが耐えられない。
こんな事故が無いように
戦うべきかも知れない。
でも、ごめんなさい。
私には、その期間を
耐えていく強さと気持ちがない。
二度も心が死んだのに…
その期間中、また何度も
心が死んでしまって、
判決が出たら、
することがなくて…
どうなってしまうか
想像がつくんだ。
店から出るとき、
受付に、開きっぱなしの
金庫が見えた。
ああ。トリミング旦那は、
ここから、
金を掴んでいったのか。
まだ茶色いお札が入ってたな。
一日の売り上げにもならない
お金を私に渡そうとしてるのか。
そんなふうに思って、
店を出た。
車に乗ったら…
外から
『申し訳ございませんでした。』
ああ。またこの言葉。
家の付近に着いた。
降りようとしたら、
トリミング旦那が
『お金を…』
私は黙って封筒を受け取った。
中身なんて、ただの紙だ。
旦那は、
三万余分に入ってると
私に渡した。
私は、バカにされてると
思った。
【世話になった、感謝はしない。車内の煙草の吸い殻は、このままで良いか…ペットボトルは持ち帰ります。】
そう告げて、
黙って降りて歩き出したら、
後ろから
『ありがとうございました。』
と、聞こえた。
ありがとうって、
そういう風に使うのか…
やつは、ホントに
残念な個体だ。
人の形をした、個体だ。
アトムのが、頭が良いな。
振り向きもせず、私達は
歩いた。
あの黄色いファミリーカーを
見かけたら、
これから一生
胸が締め付けられるだろう。
またあと何回、やつらの車に
乗らねばならないのだろうか。