伝統的なユークリッド幾何学に対して、ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンが創始したリーマン幾何学(微分幾何学)では、幾何学的な空間のいたるところで、空間が自由に伸び縮みできる。アインシュタインは、現実の世界を記述するべき一般相対性理論を、このリーマン幾何学に基づいて作り上げた。宇宙空間の縮み具合を表す曲率が一定で、正の値を持つとき、その宇宙は2次元空間で言えば球面のようになっていて、空間的に閉じている。また、空間の曲率がいたるところでゼロのときは、宇宙は平坦でユークリッド幾何学が成り立つ。さらに曲率がマイナスの値のときは、2次元空間で言えば鞍型の開いた空間となっている。
  アインシュタインは、もしも宇宙が空間的に閉じているなら、ちょうど地球儀上で地の果てである北極や南極の向こうにも地面が続いているように、宇宙には果てというものがなくなるから、境界から星が飛び出してしまうという問題そのものが解消すると主張した。物質は奇跡的なバランスで無限宇宙に分布しなければならないというニュートンの無限宇宙につきまとっていた困難は、一般相対性理論に基づいて空間的に閉じた有限な宇宙では回避できることをアインシュタインが示した。
 
<宇宙はなぜこのような宇宙なのか>
青木 薫 講談社現代新書