産経ニュース
日露関係悪化は決定的 「愛国ムード」で譲歩困難 安倍政権に大きな誤算
2014.8.23 09:47 [ロシア]
【モスクワ=遠藤良介】ロシアが特定の日本人に対して入国を制限する「報復制裁」を発動し、第2次安倍政権下で好転していた日露関係の悪化は決定的となった。ロシアでは国民多数派が米欧との対決姿勢を支持する「愛国ムード」が高揚しており、プーチン露政権がウクライナ問題で譲歩するのは難しい。同国東部の情勢が悪化すれば米欧や日本はさらなる制裁発動を余儀なくされるとみられ、北方領土問題を抱える日本には難しい状況となった。
これまでロシアは日本による制裁を「非友好的」などと批判し、今月末に予定された日露外務次官級協議の延期も発表されていた。ただ、「報復」を明言した制裁は今回が初めてで、日本に対しても「相互主義」で対抗措置をとる姿勢を鮮明にした形だ。
ロシアがクリミアを併合した3月、プーチン大統領の支持率は8割を突破し、米欧の制裁強化にもかかわらず87%に達した。主要メディアのプロパガンダ(政治宣伝)に加え、「外敵の存在で団結する」という伝統的な国民性が頭をもたげている。米欧に弱腰を見せれば国民多数派の“離反”を招きかねず、プーチン政権がどこまでウクライナ情勢正常化に向けた取り組みを見せるかは疑問視されている。
安倍晋三首相は2度目の首相に就任後、5回にわたってプーチン大統領と首脳会談を行い領土問題解決への意欲を見せていたが、一連のウクライナ問題が大きく影を落とす形になった。