中国人船長を聴取 貨物船転覆 1人なお不明
産経新聞 9月29日(日)7時55分配信
中国人船長を聴取 貨物船転覆 1人なお不明
推定される貨物船衝突事故の状況(写真:産経新聞)
伊豆大島西方沖で貨物船同士が衝突、転覆し、第18栄福丸の乗組員5人が死亡した事故で、国土交通省運輸安全委員会の船舶事故調査官は28日、衝突した西アフリカ・シエラレオネ船籍の貨物船ジィア・フイの中国人船長(41)ら乗組員から事情聴取した。
行方不明の1等機関士、三鬼(みき)多満男さん(61)は、海上保安庁の特殊救難隊が船内を捜索しても発見できなかった。第3管区海上保安本部(横浜)は範囲を広げて現場海域に巡視艇や航空機を出し、捜索を続けている。
中国人船長らへの聴取を担当した運輸安全委の阿部房雄・次席船舶事故調査官は「ジィア・フイの船首左側と、栄福丸が衝突したと推測される。計器に故障はなく、判断ミスによる事故の可能性がある」と述べた。
聴取は静岡県下田市の下田港沖のジィア・フイ内で実施。船体も調査し、船首左右のへこみや左側アンカーの損傷などが、衝突によってできたものと確認した。栄福丸の損傷状況は調べられなかったという。
3管も同日、船長ら乗組員13人全員から事情を聴いた。今後、下田海上保安部に呼び、さらに詳しく聴取する方針。
■判断ミスで左舷衝突か
事故現場となった伊豆半島と伊豆大島に挟まれた全長約27キロの海峡は、1日に約500隻の貨物船やタンカーが行き交い、「海の交差点」ともいわれる。
航路などが確認できるAIS(船舶自動識別装置)の記録によれば、同所を北進中の第18栄福丸と南進中のジィア・フイはほぼ正面から衝突する進路を取ったと推測されている。
国土交通省運輸安全委員会の阿部房雄・次席船舶事故調査官は、ジィア・フイの船首の左舷に直径約2メートルの大きな陥没跡があると指摘。一般海域での航行ルール「海上衝突予防法」では、互いの船が正面に向き合う「行き会い」の場合、それぞれ進路を右に転じて衝突を回避することが定められている。
今回は計器などの故障は確認されなかったため、一方が判断ミスで右にかじを切るのが遅れ、船首の左舷同士が衝突した可能性があるとみられる。