2023年1月に髄膜腫の診断を受けるまでの前日譚の③。

時は2022年9月あたり。コロナ後遺症外来に通い始めて約10ヶ月。
地道な治療と時間の経過のおかげで、体調もだいぶ戻ってきた中、仕事の話があり、本格的に復帰することが決まった。

ただ、前回も書いたとおり、頭痛が定着してしまって、これが1番の困りごと。
耳鼻科でのBスポット療法をかかりつけ医に先にやってもらおうと思っていたが、なかなかうまいこといかない(そりゃそうだ)。
診療のたびに「先生、Bスポット療法されました?」いや、まだです。先月本当にやろうかと思っていたのですけど、急用ができたりして・・・」などのやり取りをしていたせいで、かかりつけ医が、私のカルテを見ると、Bスポット療法を連想するようになってしまったらしい。
当然、彼がやる義理なんてものはなく、やるなら自分だという自覚もあるにはある。
頭痛が酷くて仕事にならないという状況は何とか避けたいし、コロナの後遺症患者に向けてBスポット療法を実施している耳鼻科は近所に見つけていた。

と言うことで、、腹をくくって耳鼻科へ行くことに。

ようやく耳鼻科へ足を運び、診察を受けると、このBスポット療法がマッチする状況なのかもわかりにくいため、事前にCTの機材のある別の大きめの病院で鼻のCTを撮ってから治療方法を決めるということになった。

そのため初日は治療などはせずにCTの予約だけ取ってもらい帰宅した。


そして、後日、鼻まわりのCTを撮影してもらい、CD-ROMを受け取り、再度耳鼻科へ。
そこで初めて、他に問題がないので、やってみることが決まった。
Bスポット療法(上咽頭擦過治療)とは、上咽頭に綿棒で塩化亜鉛などを擦りつける治療法なのだが、この擦りつけ方も病院によって違いがあるようで、前回記述した通り“全く痛くないという人がいる一方、あまりの痛みで心が折れ挫折してしまった人もいる”という、一か八かの大勝負なのである。

コトム、武者震い。
しかしながら、ここはカジノではないので、耳鼻科医から「とても痛いので頑張ってください」とサラッと励まされた瞬間、コトム天下分け目の戦いは、戦わずして負けが確定。
・・・無念・・・

残された望みは、可能性は限りなくゼロに近いが、“痛い治療のはずなのに、全く痛くなかった奇跡の人”になることのみ。

コトム殿、ご武運を!!!!

(自分のことは自分で励ますスタイル)

耳医「痛いので(←しつこい)、5秒を心の中で数えているといいですよ」
私「はい」
耳医「では、やりますね~」
私「!!!あ”!!!な”!!!
ぶぇえええ!!!!!!!!!」

・・絶望・・

耳医「はい!がんばって!!」

私「(1・2・3・4・5・6・7・8・・・全然5秒じゃないな、おい!!)」
耳医「はい!終わり!じゃあ次は逆の鼻ね。
私「ひっ!?!?(←それは聞いていなかった人)
耳医「また5秒数えてね~はじめま~す」
私「ぶぇえええ!!

(1!2!3!4!5!6!7!8!9!10!←数え方のスピードがアップしているのでカウントも増えていく)
耳医「はい、じゃあ、最後に喉からね。これで最後だからがんばろうね。はじめま~す。」
私「ひっ!?!?(←それも聞いていなかった人)

!!おえっ!!!!!うぐっ!!!!おうぇええ!!!」
耳医「はい、お疲れ様。しばらく痛みもあるし血がでてるけど、そのうち止まるから。1週間から10日くらいのペースで通ってもらって、最低10回はやってみましょう。」
私「・・・・あ”・・・・い”・・・・ありがとう・・・ございました・・・」


無残なまでの大敗。

精根尽き果てた私は「週1回であと9回・・。」と、おぼつかない足取りで帰路についたのだが、鼻の奥の部分がずっとヒリヒリするため、涙が止まらず、しくしく泣きながら歩くことに。
いい大人が、病院からしくしく泣きながら出てくることほど恥ずかしい画もないのだが、涙が止まらないので仕方ない。

 

すぐに効果が出る治療ではないことは聞いていたので、そんなこんなしているうちに仕事復帰も果たし、10日に1回くらいは、泣きながら耳鼻科から帰ってくる日々を過ごした。

 

そんな中、Bスポット療法を始める前にCT撮影をした話を後遺症外来のかかりつけ医にしたところ、見てみたいという希望があり、CD-ROMを持っていったのが2022年12月初旬のことである。

 

私「CD-ROMと一緒に入っていた紙の所見に“右前頭葉の一部に淡い高吸収域の可能性がありますが詳細は不明です”ってよくわからないことが書いてありました」

CD-ROMを渡す。

医「ふむふむ・・・・・・・。(CT画像を眺める)・・・本当だ・・・。これについては何も言われなかったですか?」

私「撮影した病院でも耳鼻科でも特に何も言われなかったので、気にしてなかったです。え?何かあるんですか?」

医「いや、鼻を中心に撮影しているので、よく見えないのですが、隅の方に確かに何か写ってますね。」

私「あー、何かモヤモヤっとしたものが見えますね。で、何が写っているんですか?」

医「いや、これだけだとよくわかりません。」

私「ふーん」

医「血管のなりそこないのようなものが頭の中にあって、それが石灰化すると、こういう風に写ることがあるんですよ。でも、耳鼻科の先生は仕方ないにしても、撮影した病院でも何も言われなかったんですか?」

私「・・・何も言われず、ですね」

医「何もコメントしないのは・・・どうなんだろう。まあ、何ともないとは思いますが、念のためMRIで撮影しておきましょうか。」

私「OKで~す」

 

というやり取りがあり、2023年の1月初旬、生まれて初めての頭部MRI検査をしたことにより、4センチ大の髄膜腫が発見されたのである。

その後の流れは、このブログの最初の記事に繋がっていく。

 

前日譚~エピソード0~ は長くなってしまったが、改めて振り返ると、やはり私は恵まれているな、と思う。

コロナに罹患して後遺症が出たことはきつかった、耳鼻科での治療も痛かった、でも、後遺症になったことで、脳神経外科医でもあるかかりつけ医に出会うことができたし、これまでしたことのないCT撮影をすることにもなった。

そのどれが欠けても、髄膜腫の発見に繋がらなかったのだと思う。

このような経緯があったので、腫瘍が見つかったと言われた時は、とてもとても驚いたが「症状が出る前に見つかるなんて、超ラッキーじゃん!!」と素直に思えたのである。

 

さらに、その後の脳神経外科での主治医や治療に当たってくれた方々にも恵まれ、支えてくれた家族にも恵まれている私は、とても幸せ者だ。

 

 

ちなみに、Bスポット療法だが、ひぃひぃ言いながらも7回は受けた。

そのあたりで髄膜腫が見つかり、鼻の中を引っ搔き回してるどころじゃなくなったので、中断することになったが、7回受けた中での効果は、残念ながら感じることはなかった。残されたのは、治療中に先生の背後で、ガッツポーズをとりながら「がんばって!」と口パクで励ましてくれた優しい看護師さんの記憶だけである。

しくしく泣きながら歩いた日々って・・・

いや、もう何も言うまい。