小川糸さんの「食堂かたつむり」を読みました。

この話は、数年前に映画化されて、柴崎コウさんが主人公の女の子役(倫子)をやっていました。

(本を読んだ後にDVDも見てみました。)



おおまかな内容は、

田舎で飲み屋(スナック)を営む、派手でみだらな母親に嫌悪を抱いた娘(倫子)が

家を飛び出し、清楚で古風なおばあちゃんのところで料理を教わりながら、自立。

後にインド人の彼氏ができて、二人でお店を持つことを目標に同棲し、

飲食店のアルバイトのかけもちをしながら、

コツコツと開店資金を貯めている(タンス預金)のですが、

ある日、家に帰ると、貯金も家財道具も全て無くなっており、インド人の恋人も消えていたというもの。

傷つき、途方にくれた倫子は、そのせいで声がでなくなり、

無一文のまま、唯一残っていた糠床(祖母から引き継いだもの)を抱えて、

大嫌いな母親の元(故郷)へ戻る。

倫子は数日落ち込んでいるのだが、母親から、飼っているペット(豚)の世話をするように

命令され、豚の世話を始める。

この豚(エルメス)が曲者で、高級パンしか食べなかったりと、かなりのグルメ豚だった。

倫子は山で見つけた木の実を入れてみたりと、

いろいろ工夫してエルメスに食べさせるためのパンを焼く。

そういうことをしているうちに、故郷にある、さまざまな自然の恵みを感じ、

この土地で、夢だった自分のお店を開こうと決意する。

そこからは、お店の準備の様子と、

様々なお客さんとの物語や母親との葛藤が丁寧に展開されるというもの。

基本は1日に1組だけしかお客さんを受けないお店で、

事前にお客様と面接して希望などを丁寧に聞いて、倫子がメニューを決める。

1日1組という優雅さ故、料理の描写も丁寧で興味深い。

(現実では、、、1日1組では経営して行けないのでは?と思うけれど。。。)


私が一番好きなところは、開店準備の様子と、

2番目のお客さん(お妾さんと呼ばれているおばあさん)へのフルコースの内容。

開店準備の様子はかなり細かくて、

店のドアや看板、トイレや電球といったインテリア部分の話や、

調理器具や食器類の話まで、想像するだけでワクワクします。



私は新しくオープンさせる食堂を、どこかで見たことがあるような、

けれど、初めてくるような、そんな不思議な空間にしたかった。

秘密の洞窟のような場所。。。

床はコンクリートの上にコルク材を敷き、その上にテラコッタを並べ、

冬に向けて寒さ対策のため暖色系のかわいいキリムを敷いた。

テーブルは、生前大工をしていた熊さんのお父さんが栗の木を使って作ったという、

年代物のがっしりとしたのと頂戴した。

東洋とも西洋とも言い難い独特の雰囲気があり、いい感じのあめ色に色褪せていた。

テーブルはひとつでじゅうぶんだけれど、私は他に、どうしても

ソファベットをしつらえておきたかった。

もし食後に眠くなったお客様がいらしても、すぐに横になれるし、

車でいらしたお客様がお酒を飲んだ場合はそこで休んでもらうことができる。

ソファベットはワインの木箱をいくつか並べて作った。

私はそこに、インターネットショッピングで見つけた、カントリー調の花柄の生地でできた

ミニサイズのふとんを敷いた。 そして、同じ生地を使ってクッションカバーも作り、その上に並べた。

お手洗いは、壁一面タイル貼りにし、色違いのタイルを貼りあわせて、鳥のカップルの模様を作った。

いくら料理が良くても、お手洗いが汚いとすべてが台無しになってしまう。

他のところは切り詰めても、お手洗いだけにはお金をかけることにして、

最新式のシャワー付きトイレを購入した。


食器類は、おかんが押入れの奥にしまいこんでいたものを、そのまま譲ってくれることになった。

それは、使っていなかっただけで、おかんの母、つまり祖母がおかんのために

見繕ったものだった。

中には、大正時代やヴィクトリア時代のカラフルなコップ、ベトナムの安南の古い染付のどんぶり、

古伊万里の豆皿、リチャードジノリの真っ白いスープ皿、果てはすでに製造中止になっている

古いデザインのバカラのシャンパングラスまで揃っていた。


開店準備部分の一部を抜粋してみました。

正直言って、これでは全然足りなくて、もっと紹介したいくらいです。。。

(椅子、シャンデリア、扉や、一つ一つの料理のことも)


微妙に自分の好きな感じとは違う部分もあるといえばあるけれど、

(カントリー調の花柄布団とか。。。)

ほとんどが好きな雰囲気なので、

ああ、いい。いい感じ。

と思いながら読みました。


映画でこの雰囲気をどんな風に表現したのかも見てみたくなって、

DVDも借りてみましたが、、、

きっちりと整い過ぎていて、(東京によくあるカフェみたいで、、)

本で表されているような不思議空間の感じが薄かったように思います。

(柴崎コウは可愛くて良かったけど。。。)


ちょっと現実離れした話ではありますが、私にとってはとても面白く、

何度も読み返したくなる話でした。ニコニコ