妻に愛想をつかされた私は、ショックでした。
何も、手につきません。やる気を失っていました。
だからといって、もう、私には働く場所がありません。
趣味も特技もなにもない自分。
ただ、働くことしかできなかった自分に、
私自身も、愛想が尽きていました。
何か、新たな希望と夢をもって、第2の人生を
歩むはずだった自分は、見事、夢破れていました。
毎日、毎日、ボーとしていました。
妻との会話もありません。
ある日、家の中から、じっと外を見つめていたとき、
家の前の広い庭、先祖代々、自慢の庭に目がとまりました。
1年に2度、庭師さんに手入れをしてもらう程度で、
ただ広いというだけの庭、そんなに、目を見張るような
すごい庭でもありません。
そこで、私は考えました。
自分が、この庭の手入れをして、もっと、もっと、
きれいな庭にしてやろうと。
早速、木の剪定などのやり方を、本を何冊も読んで
学びました。
本に書いてあるとおり、やってみました。
毎日、朝から晩まで、庭にいました。
松。皐月。つつじ。クロガネモチ。もみじ。
スギ苔は、毎日水遣りをしました。
やがて、草一本はえていない、立派な庭が出来上がったのです。
「やったー」
自分は、満足感でいっぱいでした。
そして、庭の手入れを始めて、数ヶ月。
庭の木々も、夏の暑さを乗り換えて、初秋の風が吹き始めたころ、
事件は、起こりました。
ある日、妻が私にこういいました。
「お父さん、もう、庭いじりはやめて!」
(うん? 庭いじりだと?!)
「お父さん、見て御覧なさいよ。
あの松が、あの皐月が、茶色くなってるじゃありませんか」
(ううん? そういわれれば、そのようだ?
でも、なぜだ?)
「お父さん。毎日、毎日、葉を刈り続けられた松や
皐月はどうなります?
やっと、新しい芽をつけても、すぐに父さんは、
刈ってしまうんだから。
あたらしいいのちを刈り続けて、どうするつもりだったの」
私は、58歳の悲しい男です。(´_`。)グスン
この話は、フィクションです。。
少しでも多くの方に読んでいただきたいので、
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