水晶都市 2 | せつなしゅぎ

水晶都市 2

予告したとおり、かつて、メールゲームで使ったキャラクターのノベル

をここに、あげていこう、と思います。

イラストは、オーダーメイドコムのmr2さんにお願いしました。

せつなしゅぎ-2009062901

ノベルの作者は、高原恵さん。


『オアシスの 美女と野獣』
●砂漠の街にて
 雲一つない青き空高く―――燦々と輝く太陽は、砂漠に存在するオアシスとそこに住
まう民たちを照り付けている。これより語られるは、そんな砂漠のオアシスの街での
、とある女性の物語。あるいは……日常やもしれぬ。それは、聞いた者の判断に任せ
よう。
 ともあれ、街の広場付近にはいつものように市が立ち、人々の賑やかな声が聞こえ
ていた―――。

●日中の賑わい
「さあさどうだい! 取り出したるこのサーベル、そんじょそこらの……」
「はあそうかい。南の方はそんな具合かい」
「甘く美味しい果物だよ~。オアシスの水で冷やした果物だよ~」
「おいおいおい、もう少しまからねぇか?」
「ニャー」
「旦那旦那! お安くしときやすぜ、へっへっへ」
 広場周辺では様々な声が聞こえてくる。売り買いの様子、旅人たちの情報のやり取
り、猫の鳴き声……本当に多種多様だ。そんな中で一際高いのは歓声であった。
 広場の北の方で、長い金髪を頭の後ろでアップにしてヴェール状の薄布をつけた1
人の白人の踊り子が踊っていた。それを扇状に取り巻いて見ている者たちが歓声を上
げたからである。
「おー、チスレインか」
「今日も見事な踊りだねえ」
 観客たちのそんなつぶやきから、この踊り子の名前がチスレインといい、恐らく毎
日のように踊っているらしいことが窺い知れる。だが確かにこのチスレイン、見事な
踊りを見せていた。
 トントンとその場にて片足で何度も跳ねる様子があるのだが、ローヒールを履いた
足元をじっと見ているとほぼ位置を違わず着地しているのである。それだけ身体の軸
がぶれていないということだ。
 チスレインは決して若い娘ではない。見た所28,9……といった感じだろうか。
だがだからこそ、先述のような踊りの力量を持ち合わせているのかもしれない。
「しっかし……いつ見てもいい女だぜ」
「結婚してますます色っぽくなったんじゃねえか?」
「ああ。あの腰から尻にかけての肉付き……いやあいい女だな!」
 一部の男たちからは、踊るチスレインを見てそんな声が漏れてくる。それはそうだ
ろう。胸や腰、そして肩口のパッドから手首までといった各箇所をぴったりと覆う青
い布ごときでは、チスレインの豊満な肉体が放つ魅力を隠せやしないのだから。
 いや……チスレイン自身も、自らの肉体を隠そうとは思っていないに違いない。そ
のつもりがあるのなら、わざわざ腰に巻く布をハイレグにはしないだろうから。
 けれども、チスレインはすでに人の物となっている。その証拠に、左手の薬指では
時折太陽の光を受けて指輪が輝いているではないか。つい先頃式を挙げた証である。
もっとも夫となった男はそれからすぐ西の果てへと出征し、現在離れ離れの通い婚状
態ではあるのだが……。
「あたしもおねーちゃんと踊るー!」
 チスレインの見事な踊りに触発されたのだろうか、取り巻いて見ていた中から小さ
な女の子が飛び出してきて、チスレインを真似て踊り始めた。けれども上手に踊れる
はずもなく、観客からくすくすと笑い声が起こった。
 するとどうだろう、チスレインがそんな女の子の稚拙な踊りに合わせ始めたではな
いか。それを見た観客からは、今度は拍手が起こり始めた。 
 さて―――そんなチスレインの姿を、少し離れた屋台の前から見つめている褐色肌の
男が居た。
 短い黒髪に無精髭、そして上半身剥き出しで若干出始めている腹部をも男は晒して
いた。といっても、全体的に男の身体は引き締まっている方だといえよう。そして肩
口や脇腹、両腕などに薄く残る斬り付けられた痕を見るに、男が腕一本で渡ってきた
のではないかと推測された。
 その証拠に腰に吊るした20センチ強ほどの短剣の握りはしっかと使い込まれてい
て、男の右腕は左腕よりも若干太いではないか。
「チスレイン……」
 男がぼそっとつぶやいたその時、屋台から声がかかった。
「お客さん! 買うの、買わないの?」
「あっ。ああ、1つもらおうか」
 男は冷やされた果物を受け取ると、屋台を離れて歩きながらその果物にかぶりつい
た。視線は踊り続けるチスレインの方へ向けたまま―――。

<次回で、完結です>