跡部蛮の「おもしろ歴史学」

跡部蛮の「おもしろ歴史学」

歴史ファンの皆さんとともに歴史ミステリーにチャレンジし、その謎を解き明かすページです(無断転載禁止)

 毛利元就の孫、輝元の代になってくると、いよいよ戦国時代も大詰めを迎えます。

 

 織田信長から豊臣秀吉、徳川家康へと天下が激動する時代でした。

 

 そして天正10年(1582)、毛利家は重大な判断を迫られました。

 

 中国地方の制圧を狙う織田軍の主将秀吉と対峙する渦中、信長が京の本能寺で討たれたのです。

 

 その事実を知った秀吉は毛利と一時停戦し、京へ大返しするわけですが、そのとき、遅ればせながら、毛利家にもこの変事の情報が入っていました。

 

 つまり、秀吉を追って上洛するという選択肢もあったのです。

 

 しかし、動きませんでした。

 

 毛利家家臣の玉木吉保が残した『身自鏡(みじのかがみ)』によりますと、当時、毛利家の重臣の内、五人を除いてすべて秀吉に調略されていたといいます。

 

 その真偽は定かでありませんが、当時、領国内が不安定だったのは事実でしょう。

 

 動くに動けなかったのです。

(つづく)

[最新刊のお知らせ]

『超新説で読みとく信長・秀吉・家康の真実』

♯塗り替えられた戦国史の謎に迫ります!

 

※「辻大悟ノベルズ」からのお知らせ

別名のペンネーム(辻大悟)で書いた小説『キンカコ 八人のワンダラー』(kindle版)をリニューアルしました。

♯現在から見たキンカコ(近過去)の2000年が舞台。貸し渋りが横行する時代に、銀行へ不渡り手形を掴ませるチンケな詐欺を働いていた美人詐欺師と彼女を追う現職の刑事。その二人に大蔵官僚や病院の名物院長らを加えたワンダラーたち。その八名が国際犯罪組織の野望を打ち砕く痛快犯罪ミステリー小説。20年後、30年後の近未来に生きている自分たちのために、いま戦え!

「坂東は家康、坂西の儀は輝元に申し付ける」(『毛利家文書』)

 

 文禄四年(1595)、当時は豊臣秀吉が天下を掌握していた時代で、その配下の大名として、坂東(東日本)の徳川家康とともに坂西(西日本)の毛利輝元がこの国を二分して政治を任せられていたというのです。

 

 祖父の元就が家督を継いだ際、安芸の国衆の一人にすぎなかった毛利家が西日本最大の勢力となり、輝元は壮麗な広島城を築いています。

 

 父の隆元は、偉大な父(元就)と優秀な兄弟(吉川元春・小早川隆景)たちの間にあって、コンプレックスに悩み続けましたが、“毛利の三代目”はどんな武将だったのでしょう。

 

 輝元は天文22年(1553)に隆元の長男として生まれ、11歳で父と死別。

 

 13歳で元服した後も祖父元就の後見を受け、19歳の時にその祖父が死去した後には2人の叔父(元春・隆景)と一族の長老(福原貞俊)、家臣の重鎮(口羽通良)に支えられました。

(つづく)

[最新刊のお知らせ]

『超新説で読みとく信長・秀吉・家康の真実』

♯塗り替えられた戦国史の謎に迫ります!

 

※「辻大悟ノベルズ」からのお知らせ

別名のペンネーム(辻大悟)で書いた小説『キンカコ 八人のワンダラー』(kindle版)をリニューアルしました。

♯現在から見たキンカコ(近過去)の2000年が舞台。貸し渋りが横行する時代に、銀行へ不渡り手形を掴ませるチンケな詐欺を働いていた美人詐欺師と彼女を追う現職の刑事。その二人に大蔵官僚や病院の名物院長らを加えたワンダラーたち。その八名が国際犯罪組織の野望を打ち砕く痛快犯罪ミステリー小説。20年後、30年後の近未来に生きている自分たちのために、いま戦え!

 天文20年(1551)、大内家の重臣陶晴賢が主君の義隆父子を討って下剋上を成し遂げた陰謀に毛利元就が関係していた事実は各史料から窺えます。

 

 その後も晴賢に義理立てしようとする父に隆元はこう説得します。

 

「晴賢は主君を討つ悪心を持つ男だから、この世に元就より怖い者はいないと思い、必ずや父上を討ち果たそうとするでしょう」

 

 こうして父元就を翻意させたのです。

 

 結果、元就は弘治元年(1555)、厳島で晴賢を討ち、毛利家は一気に勢力を中国地方一円へ広げることができました。

 

 その隆家は永禄6年(1563)、父に先立ち、41歳で急死しましたが、彼がいなければ、毛利家の繁栄はなかったかもしれません。

(つづく)

[最新刊のお知らせ]

『超新説で読みとく信長・秀吉・家康の真実』

♯塗り替えられた戦国史の謎に迫ります!

 

※「辻大悟ノベルズ」からのお知らせ

別名のペンネーム(辻大悟)で書いた小説『キンカコ 八人のワンダラー』(kindle版)をリニューアルしました。

♯現在から見たキンカコ(近過去)の2000年が舞台。貸し渋りが横行する時代に、銀行へ不渡り手形を掴ませるチンケな詐欺を働いていた美人詐欺師と彼女を追う現職の刑事。その二人に大蔵官僚や病院の名物院長らを加えたワンダラーたち。その八名が国際犯罪組織の野望を打ち砕く痛快犯罪ミステリー小説。20年後、30年後の近未来に生きている自分たちのために、いま戦え!