観た、『悪魔の手毬唄』 | Joon's blog

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支離滅裂

『悪魔の手毬唄』を観ました。

 

昭和27年。

金田一は顔馴染みである磯川警部の依頼で鬼首[オニコウベ]村にやって来ていた。

かつて磯川は鬼首村で起きた殺人事件を担当していたが、20年を過ぎながら未解決である事件を調査するため金田一の手を借りたいという。

村は由良家と仁礼[ニレ]家の大家同士が対立していて、金田一らが宿泊する民宿の女将の息子である歌名雄[カナオ]を巡り、両家の娘が火花を散らしていた。

そんな折、仁礼の娘である泰子、そして由良の娘である文子が何者かにより殺される。金田一は、彼女らの殺され方が村に伝わる手毬唄の歌詞の通りである事に気付き……といったお話。

要約すると、金田一が村に伝わる歌の歌詞に倣って行われる連続殺人を追う話です。

 

監督の市川崑さんと金田一を演じる石坂浩二さんのコンビによる、いわゆる金田一シリーズ第2作(便宜的に“金田一シリーズ”と銘打って各作を関連付けていますが、全部で5作あるみたい)。

70年代における金田一映画の世界観は本作を以て確立されていますね。天気は常に曇天だったり、家の中の照明がないに等しかったりという不気味感は今作でも健在。

もう半世紀近い古い作品ですが、古いからって1ミリも怖くないわけでは決してなく、ショッキングなシーンはむしろ現代では出せない雰囲気があって時折ドキッとさせられます。初めて露わになる里子のビジュアルとか、文子の殺され方はけっこうなインパクトを残します。子供の時分だったら夜が怖くなりそうですよ(笑)。

ただ、血の表現が相変わらずペンキ感丸出しなのは見逃してやって…。

 

ジャンルとしては恐怖映画なんでしょうが、誰が何のために殺人を犯すのかを追う謎解き系といった方が正確かな?

相変わらず登場人物が多い&関係も複雑で、キャラ相関図や家系図が手元に欲しいと感じる作風も金田一作品のイズムです(笑)。

 

村に伝わる童謡の歌詞の通りに行われる殺人。被害者に共通するのは恩田という男に弄ばれた3人の女の娘という、ある規則性を秘めた殺人の手法(?)は90年頃から流行り出す猟奇殺人モノに先駆けています。

後年のそれらと決定的に違うのは、こちらは殺人の根っこに怨恨があるだけでなく、加害者は辛く苦しい過去を引きずっているという点。遊び半分に人を殺すような変態性はないんですよね。正当性はないけど、少なからずの酌量の余地はあるというか。

当初の予定通りに3人を殺したはずが、3人目にして綻びが生じてしまうのも悲しいのです。

 

キャストで注目するのは、磯川警部を演じる若山富三郎さん。

ヤクザの大親分のイメージが強い人ですが、本作で演じるのは警部というのが新鮮味がありますね。部下のドジを叱咤する時は、いつもの感じが出ちゃってますが(笑)。

そんな若山さんが演じる磯川警部は、個人的に引っ掛かるという理由を付けて事件の捜査を続行し、その行動原理にあるのは民宿の女将であるリカへの想い。

警察の人とは思えないようなドスが利いた凄みを持ち合わせながら、中身は純情というギャップがいいんですよ。

リカが犯人だと疑われて、ムキになって否定するシーンはいじらしさすら伺えます。

 

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今回はBSで放送されたものの鑑賞。

金田一映画シリーズ5作はBlu-rayで揃えたいなぁと思っていたんですが、東宝の映像ソフトは昔っから高額なんですよねぇ。